2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13641
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 開口フラーレン / 内包フラーレン / 窒素分子 / 二酸化炭素分子 / 単結晶X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
望みの内包フラーレンを高効率で得るためには,有機反応の手法を用いてフラーレンに開口部を設け,その開口部より小分子・原子を内部に導入し,その後開口部を修復するという最も明快かつ選択的な内包フラーレン合成法の開発が望まれる.申請者らはフラーレンの炭素骨格の変換反応を機軸とし,これまでにヘリウム原子や水素分子,水分子を内包したフラーレンの合成法を開発してきた.しかし,N2やCO2等のさらに大きな分子を内包させるには,開口部のサイズを効果的に拡大する手法を開発することが重要である.本研究では,フラーレンC60の開口部を拡大する反応を開発し,H2O,N2,CO2分子を内部に導入することを目的に以下の検討をおこなった. 理論計算による検討から,最近合成した開口C60は窒素分子が容易に通過できる大きさの開口部をもつことが予想されたため,この内部への窒素分子の導入を検討した.まず原料に内包されている水分子を放出させるために開口体粉末を真空下,100度で加熱した後,高圧の窒素ガスを室温で接触させた.次に,内包された小分子の放出を抑制するために,得られた粉末をODCBに溶解させ,0度でNaBH4と反応させることで,4つのカルボニル基のうち1つを選択的にアルコールへと還元した. 得られた生成物をHPLCを用いることにより,窒素内包体を単離精製することに成功した.同様の手法により,二酸化炭素内包体も合成・単離した.得られた窒素内包体および二酸化酸素内包体の単結晶をそれぞれ作製した.X線結晶構造解析の結果,窒素分子および二酸化炭素分子は誘導体の骨格中央に位置し,長軸を開口部に向けて静止していることが明らかとなった. これらの結果は,電子的・磁気的に活性な小分子を内包したC60の合成に発展できることが期待され,それらの基礎物性に興味がもたれる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた窒素分子の開口フラーレンへの導入に成功している。また、当初は困難であると考えていた二酸化炭素分子も開口フラーレンへ導入出来ることを見いだし、更なる発展が期待できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
フラーレン開口体内部へ高活性化学種を挿入するため、2つの方法論を試みる。 まず、有機溶媒中で、開口フラーレンを化学的あるいは電気化学的に還元して2価アニオンを発生させる。そこへ、配位力の低い対アニオンを用いた金属塩を作用させ、クーロン引力による自発的な金属イオンの内部への挿入を試みる。金属イオンの半径はデータ集から見積もることが可能であり、開口部の大きさは障害にはならないものと期待される。一方、金属イオンが強いルイス酸性をもつ場合には、開口部の酸素官能基に配位してしまい、内部への挿入が進行しない可能性がある。そこで、Au(I) や Au(III) のように、酸素よりも炭素への親和力が強いとされている金属イオンを中心に検討を加える。また、極性の低い溶媒を用いることによって、生成系の安定化を図り、金属イオンの内包を達成させる。金属イオンの内包が確認された後に、内包体の電荷を中和し、電気的に中性の金属原子内包体を合成する。 次に、1万気圧の超高圧条件下、溶液中での挿入を検討する。適切な前駆体を加熱することにより、もし「単原子」を短寿命化学種として「その場発生」させることができれば、圧力効果により内部への挿入反応が有利に進行するはずである。副反応としては、フラーレン骨格外側への付加反応や、高活性化学種の失活が想定されるが、単原子発生ならびに副反応に少しでも可逆性があれば、熱力学的に有利な生成物が得られるものと期待できる。具体的には、金属ナノ粒子・金属錯体・担持された金属を前駆体として用いて、Fe, Pd, Au 単原子を開口体内部に捕捉させる。硫黄やリンの場合では、安定な同素体を加熱することによって、活性化学種を発生させる。
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Causes of Carryover |
合成反応の収率が予想よりも高い条件を見出すことができた。そのため、当初予定していた試薬・シリカゲル・消耗品の購入量を抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、次年度において試薬・シリカゲル・消耗品の購入に当てる。
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