2015 Fiscal Year Research-status Report
重水素化ワールド:革新的有機分子触媒・生体機能性分子の開発
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15K13644
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小槻 日吉三 高知大学, 総合研究センター, 特任教授 (80093954)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 有機不斉触媒 / 重水素化有機触媒 / チオ尿素触媒 / 有機アミン系触媒 / 不斉Michael付加反応 / 生物活性天然物合成 / マイクロウェーヴ反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、D原子の特性(C-D結合/O-D結合の短さ=強さ)に着目し、新しいコンセプトによる新規有機分子触媒を開発するとともに、生体機能性分子への精密的D原子導入による新しいタイプのバイオイメージング材料の創出を目的とした。H27年年度は特に、次の二つのテーマを中心に検討した。①チオ尿素系有機(不斉)分子触媒への選択的D原子導入法の開発、②その他の有機(不斉)分子触媒の活性プロトンのD原子変換。その結果、次のような成果を得た。 ①チオ尿素系有機触媒のNH基のND基への完全変換: チオ尿素系有機触媒を重メタノールに溶解し、それに対するマイクロウェーヴ照射によるD化を検討し、短時間で完全にNH基がND基に変換されることをNMR及び元素分析により確認した。本触媒の有機分子変換への応用についてはまだ未知であるが、その予備的知見を得るために、チオ尿素/ハロゲン化トリチルをトリチルカチオン発生源とし、それを触媒的に使用する新規なカルボニル/エン環化反応への適用を検討した。その結果、望む反応がきれいに進行することを確認した。 ②その他の有機アミン系分子触媒の活性プロトンのD原子変換: 有機アミン系(不斉)触媒を中心に①と類似の手法を適用して活性プロトンのD化を検討した。その結果、この場合にも当初期待通りの生成物を得たが、触媒活性については未知である。なお、本触媒システムの予備的知見として、光学活性な第一級アミンを有機不斉触媒とするシクロアルカノン類の新規不斉Michael付加反応、それを基軸とする生物活性天然物の合成を検討し、当初目的を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体を通してほぼ当初計画通りの成果を得ている。このうち、チオ尿素系有機触媒のD化については、新規方法論の開拓に成功し、望む生成物ができていることを各種分析法により確認した。併せて、本研究の応用としての予備的知見を得るために、有機触媒反応の開発についても当初計画通りの成果を得ており、未発表のものについては今後随時論文発表していく予定である。もう一つのテーマである有機アミン系触媒のD化についても、当初目的を達成している。今後、この方法論の一般性を拡張し、それを用いた新規触媒反応を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
①D化したチオ尿素系有機分子触媒の触媒活性の検討: カルボニル―エン環化反応、及びそれに関連する反応への適用を検討する。併せて、新規なチオ尿素系分子触媒の開発についても、重水素置換体の生成と並行して進める。 ②D化したチオ尿素系有機分子触媒の重水素結合形成能の検討: このテーマに沿って、我々が以前報告したチオ尿素触媒/過酸化水素を用いるシクロブタノン類のBaeyer-Villiger酸化(RSC Adv. 2012, 2 (15), 6135-6139)について検討し、重水素置換効果を検証する。 ③上記の反応を適用し、有用な生物活性天然物合成を検討する。
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Research Products
(17 results)