2015 Fiscal Year Research-status Report
単分子電気伝導度測定に基づく導電性DNAナノワイヤー創製
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15K13734
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
田中 好幸 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70333797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶本 真司 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80463769)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 核酸関連化学 / 生物無機化学 / 生体構造化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者のこれまでのメタロDNA分子(金属の一次元配列を有したDNA分子)の研究とバンド理論(固体金属の導電性理論)に基づく考察より、金属イオンの一次元配列に物理・化学的変調を加えて導電性を付与する方法論が見いだされた。本研究課題では、メタロDNA分子および四重鎖DNA分子の内部に形成される金属イオンの一次元配列に着目した単分子電気伝導度の直接測定およびDNA分子を構造基盤とした導電性ナノワイヤー/分子磁性体創製を目指す。本研究課題は、分子の構造と物性に基づくボトムアップ的機能性分子創製の戦略をとっている。従って、メタロDNA分子および四重鎖DNA分子の構造および物性の理解のさらなる深化をめざして、当該分子の構造/物性解析も並行して行うことも本研究の目的である。 なおメタロDNA分子および四重鎖DNA分子を導電性材料とするためには、長鎖の分子を作製する必要がある。したがって平成27年度は、メタロDNA分子および四重鎖DNA分子等(以下、メタロDNA分子と総称)の金属を内包した長鎖核酸分子の調製を目指した。なお長鎖メタロDNA分子の調製法について検討している過程で、共同研究者により、比較的長い金属配列を内包したDNA二重らせん分子の結晶構造が決定された。なお結晶構造によると、塩基対を組まずに外に出てしまっている核酸塩基も存在しており、金属イオンを結合して内包するのに関与する残基のみを残した単純なDNA配列を化学合成した。この合成したDNA分子を用いて、結晶外でも金属イオンを多数結合して金属配列をDNA分子内に形成できるかどうかを検討した。具体的には、NMR分光法を用いて当該配列に金属イオンを滴定したところ、期待通り多数の金属イオンが結合できることが判った。このようにナノワイヤーとして有望なDNA分子が見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタロDNA分子はそのままの状態では半導体レベルの導電性しか示さないと報告されている (Isobe's group, Chem. Lett., 2011, 40, 318等)。従って、メタロDNAを導電性ナノワイヤーとするには、何らかの物理的摂動或は化学修飾により「導電性を付与する」という発想の転換が必要である。なお固体金属の導電性は金属原子が長く連なっていることが必須条件となっている。従って、長鎖メタロDNA分子を作製することが、DNA分子に導電性を付与するための第一ステップとなっている。その観点から、本研究課題の最初の実験として、長鎖メタロDNA分子の調製、及び、調製法の検討を掲げている。当初の予定では、金属を介した塩基対(メタロ塩基対: T-Hg(II)-T、C-Ag(I)-C等)からなるDNA分子や四重鎖DNA分子(四重鎖内腔に金属イオンの一次元配列を包含)を用いた長鎖メタロDNA分子の調製を考えていたが、共同研究者の結晶構造解析により、第三の候補配列が現れた。共同研究グループ内では最も長い金属配列が形成されていたため、こちらの新規配列についての解析を今年度は優先することとした。なお単に同じ配列を調製するだけでなく、結晶構造を参考に不要と思われる残基を除去した改変DNA 配列も調製した。上述した通り、この改変DNA配列は、滴定実験の結果から多数の金属イオンを結合することがわかった。また、結晶構造解析が行われた配列自体も合成を行い、本配列のもつポテンシャルをさらに解析する準備を進めている。このように、本研究課題は順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで述べた通り、メタロDNA分子に導電性を付与するためには、長鎖メタロDNA分子の作製が必須である。なお、今回新たに見いだされた配列以外にもナノワイヤー候補の核酸分子がいくつか存在する。具体的には、四重鎖DNA(G-quadruplex)、T-Hg(II)-T塩基対またはC-Ag(I)-C塩基対を連続して含むDNA二重らせん分子等がある。今後はさらに、四重鎖DNA(G-quadruplex)、T-Hg(II)-T塩基対からなるDNA二重らせん分子を構造基盤としたナノワイヤー調製法の検討も行いたい。具体的には、以下のような方法を考えている 1)T-Hg(II)-T塩基対またはC-Ag(I)-C塩基対からなる「数塩基程度の短いDNA二重らせん分子」をビルディングブロックとして、それらをDNAリガーゼ(DNA連結酵素)で連結し、長鎖メタロDNA分子を作製する。なお、T-Hg(II)-T塩基対またはC-Ag(I)-C塩基対はワトソン-クリック型塩基対のミミックとして働き、本塩基対を含むDNA二重らせん分子は酵素の基質となることが判っている。 2)四重鎖DNAの内腔の金属イオンを水銀イオンに置き換えたものを調製する。また効率的に内腔に水銀イオンを包含するための四重鎖DNAのアニーリングプロトコールを検討する。なお、水銀イオンはイオン半径がナトリウムイオンと同程度であり、内腔に包含されうる半径である。 3)新規に見いだした塩基配列について溶液中での金属イオンの結合状態を明らかとして、その構造を決定する。 これらの実験を並行して行うことで、長鎖メタロDNA分子の調製法を確立することを目指す。また得られたメタロDNA分子の導電性について、検証を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題申請時は東北大学に在席していたが、平成27年度に所属先が徳島文理大学にかわった。それに伴って、旧所属では必要であった試薬や機材の購入の必要がなくなり、当初予定額より支出が下回ったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目となる平成28年度は、多くのDNAオリゴマーを合成しなければならない年となる。研究費は新規に合成を行うDNAオリゴマーの試薬購入に充てたいと考えている。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Direct Detection of the Mercury-Nitrogen Bond in the Thymine-HgII-Thymine Base-pair with 199Hg NMR Spectroscopy2015
Author(s)
Takenori Dairaku, Kyoko Furuita, Hajime Sato, Jakub Sebera, Daichi Yamanaka, Hiroyuki Otaki, Shoko Kikkawa, Yoshinori Kondo, Ritsuko Katahira, F. Matthias Bickelhaupt, Celia Fonseca Guerra, Akira Ono, Vladimir Sychrovsky, Chojiro Kojima and Yoshiyuki Tanaka
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Journal Title
Chemical Communications
Volume: 51
Pages: 8488-8491
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Structures, physicochemical properties, and applications of T-HgII-T, C-AgI-C, and other metallo-base-pairs2015
Author(s)
Yoshiyuki Tanaka, Jiro Kondo, Vladimir Sychrovsky, Jakub Sebera, Takenori Dairaku, Hisao Saneyoshi, Hidehito Urata, Hidetaka Torigoe and Akira Ono
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Journal Title
Chemical Communications
Volume: 51
Pages: 17343-17360
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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