2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13794
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青木 芳尚 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50360475)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸素発生電極 / 水素製造 |
Outline of Annual Research Achievements |
過電圧の小さな酸素発生電極触媒の創成は,人工光合成プロセス (水電解) の効率向上のために欠かすことができない要素である.植物の光化学系IIにおける酸素発生中心はCaMn4O5マンガン4核クラスターで構成され,そこではわずか0.16 V程度の過電圧で酸素発生反応が進行する.この反応過程では,Mnの一部が高原子価V価状態に変化し,これが酸素発生反応の律速段階とされるO-Oペルオキシ結合の形成を促進するため,反応に重要な役割を担うとされる.本研究ではMnVO43-オキソ酸からなるBa3(MnO4)2を電極として用いた際のアノード分極時における酸化反応についての検討を行った. BaCO3, MnO2を化学量論比で混合し,乾燥空気中900°Cで8 h焼成した.再度混合した後,同様の条件下で48 h焼成することでBa3(MnO4)2粉末を得た.Ba3(MnO4)2,カーボンブラック , PTFEバインダーを混合し,15 MPaで一軸成形することでペレット電極を作製した.作製したペレットを作用極とし,過塩素酸ナトリウム中性水溶液中で電気化学測定をおこなった. XRDおよびMn LIII-edge XAS測定より,合成した試料は5価Mn酸化物単一相であることを確認した.作製したペレット電極を用いて電気化学測定をおこなったところ,0.6 V (vs. Ag/AgCl) 付近からアノード電流の立ち上がりが観察された.しかし,アノード分極中に酸素の発生は確認できなかった.また,試料をATO導電助剤と混合した場合には,0.6 Vにおいて電流の立ち上がりは見られなかった.アノード分極時の電極表面をin-situ Raman分光法で観察したところ,アノード電流が流れる電位においてO-Oペルオキシ結合に帰属されるピークが出現した.これはアノード分極によりMnVO43-のO2-アニオンがH2Oとレドックスを起こし,さらにこの反応により生じた強い酸化力をもったMnオキソ酸が,カーボンと反応することでアノード反応が進行していると推測される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は,Mn5+酸化物による高効率酸素発生極の開発である.現在までに電極表面上で,アノード分極時に水の酸化によるO-O結合形成をRaman分光法により観察している.しかしながら,流れる電流値が小さく,発生する酸素の定量が行えていない.この点は本研究に必須の検討課題なので,早急に解決したい.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の様に,Ba3Mn2O8電極上での酸素発生反応を証明するためには,発生酸素の定量とクーロン効率の算出が不可欠である.そのためにはより大きな酸素発生電流を生む電極作成が急務である.その上で電極反応メカニズムを検討する.この目的のため,本年度は次のことを検討する 1.より大きな酸素発生電流を生じるBa3Mn2O8電極を作製する.具体的には,炭素へのBa3Mn2O8酸化物触媒の担持量,およびBa3Mn2O8触媒の粒径を制御し複合電極構造の最適化を図る. 2.マイクロGCによる酸素検出を高効率化するために,電気化学セルを再度設計する. 3.Ba3Mn2O8触媒のナノ粒子を生成し,電極触媒に用いる.具体的には液相合成法と低温焼成の組み合わせにより,粒子成長を可能限り抑制した電極作成をめざす. 4.最適化した電極を用い,電気化学インピーダンス法により分極の評価を行い,電極反応の律速過程を決定する.
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