2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS由来の細胞の分離・精製する直行型マイクロ流体システムの開発
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15K13911
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
劉 莉 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (50380093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 一成 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (40362537)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / 細胞分離精製 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト多能性幹細胞の樹立以来、再生医療及び創薬分野への応用が期待されている。これまで、ヒトiPS細胞の初期化法及び目的細胞への分化誘導法の開発が注目されてきたが、次の目標として、ヒト幹細胞由来の細胞製品の産量化、品質管理、移植及び創薬分野へ提供法などの問題を解決する必要がある。特に、ヒト幹細胞由来の細胞製品を用いた再生医療技術において、残存する未分化細胞や目的以外の細胞の混在等の問題が存在し、それらの細胞を除去せず移植へ用いると、腫瘍の形成や、目的細胞の機能低下の恐れがある。 現在、細胞分離法として、フローサイトメトリーが広く利用されているが、高価、なおかつ高速流体内で細胞にレーザーを当てることから、細胞への光学的・機械的ダメージが課題である。また、近年マイクロ流体デバイスを用いた細胞処理が多く提案されているが、細胞へのダメージに関しては明らかになっておらず、細胞を研究する研究者からはマイクロデバイスに対する疑問もある。 そこで、本研究は、マイクロ流路における細胞へのダメージを世界に先駆けてヒトiPS細胞由来の細胞に対して明らかにし、その知見を元に流体中の細胞挙動を解析する連成解析を用い、ヒトiPS由来細胞の機械的特性は他種類の細胞と異なることを考慮したデバイスの内部構造の最適化を実現し、細胞にダメージを与えない非侵襲的かつ高効率に細胞を選別・精製・回収可能な分離原理を考案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度マイクロ流路内構造における細胞へのダメージを明らかにするとともに細胞と流体の連成解析ソフトウエアを用いて、デバイス中の細胞軌跡のシミュレーションを行い、流体デバイスの内部構造をダメージが無く、実際のヒトiPS細胞由来の目的細胞と混在する細胞を回収・分離できるように最適化を行った。具体的に、ダメージが無く、実細胞を効率的に分離できるデバイスの最適化条件を求めるための数値解析に関しては下記の項目を検討した。(1)流体デバイスの長さ、幅、高さなどの検討。(2)ピラーのサイズ、ピラーのスペースなどの検討。(3)メッシュ構造の検討。(4)一方通行モードと循環モードの比較。 各種類細胞に適合デバイスの作製条件の探索。理論上で見出した最適化条件でデバイスを作製し、実際に未分化細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞などを用いて、それぞれ個別にヒトiPS由来心筋細胞と混在し、分離実験を実行した。得られた結果によって、理論上で再シミュレーションを行い、デバイスの設計を改良する。最終的に、各種類の細胞に適合したデバイス作製条件を見した。(1) シミュレーションの結果によって、流体デバイスの作製をした。(2)トラップと回収率の測定及び効率を向上させる方法の探索、シミュレーションの結果から作製されたデバイスを用いて、各種細胞をヒトiPS細胞由来した心筋細胞と個別に混合して、各細胞の分離効率と心筋細胞の回収率を測定しながら、回収効率を向上させる方法を最適化した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度見出した条件で作製したデバイスの再現性を確認する予定。さらに、ダメージに弱いヒトiPS由来の実細胞の解析を元に、ダメージの無い内部構造を検討する。そして、心筋細胞と混在している未分化細胞や線維芽細胞など、4種類の細胞集団の分離を実現する。 ① 回収された心筋細胞の回収率及びダメージ評価、同時に除去された細胞のトラップ率評価を行う。(1)心筋細胞の回収率とダメージを評価するため、回収された心筋細胞の生存率を調べる。(2)フローサイトメトリーにより、マイクロ流体デバイスを流す前と比較して、回収率を解析する。(3)免疫染色法や、RT-PCR法により、細胞ストレスやダメージと関係する遺伝子発現レベルを調べ、ダメージの評価を行う。(4)トラップされた細胞を同定する。抗体-抗原反応によって、ピラーの周囲にトラップされた細胞の免疫染色を行う。 ② 複数種類の細胞を心筋細胞とミックスして、改善した直列式デバイスに流す実験を行う。(1) デバイスの改良を行う。本年度①で得られた結果を用いて、再シミュレーションを行う。その繰り返すことによって、更なる流体デバイスを改良する。(2) 直列式デバイスを構築して、4種類細胞集団の分離実験を行う。各種の細胞に適合したデバイスを直列式に繋げることで、複数種の細胞(ヒトiPS細胞、線維芽細胞、血管内皮など)を順次トラップして、目的細胞(ヒトiPS細胞由来した心筋細胞)を回収する。(3) トラップされた細胞の分離率と目的細胞の回収率及びダメージの解析を行う。本年度の①項目と同じ方法で解析と評価を行う。
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Causes of Carryover |
今年度計画通りに進んでいたが、見出した最適化条件で再現性を確認はまた完了していない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度最適化条件で再現性を検討するために実験を行う予定。
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Research Products
(3 results)