2015 Fiscal Year Research-status Report
「腫瘍内で瞬時にゲル化する磁性流体」の開発による局所化学療法と磁気温熱療法の実現
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15K14146
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
林 幸壱朗 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (80580886)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スマートマテリアル / 磁性流体 / ナノ医療 / セラノスティクス / MRI / DDS / 温熱療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は生体適合性が高く、生分解性の材料のみを使用して、「腫瘍に投与した瞬間にゲル化する抗がん剤含有磁性流体」の作製に取り組んだ。このような磁性流体は酸化鉄ナノ粒子、多糖、アミノ酸を用いることで作製でき、抗がん剤としてドキソルビシンを含有させることができた。酸化鉄ナノ粒子は、アリル基を有する鉄錯体の加水分解・縮合により合成した。この合成方法により得られた酸化鉄ナノ粒子は、粒子表面にアリル基を有しており、また、粒径が均一であった。この酸化鉄ナノ粒子表面のアリル基を利用し、酸化鉄、アミノ酸、多糖間に共有結合や水素結合などの相互作用を働かせることで、磁性流体を安定化させることができ、酸化鉄ナノ粒子の沈降やドキソルビシンの磁性流体からの漏出を抑制することができた。このような磁性流体を腫瘍内と同じイオン環境の水溶液に注入すると、瞬時にゲル化することを確認した。さらに、生成したゲルをゲルを生理活性食塩水に入れ、交流磁場(100 Oe, 230 kHz)を印加したところ、このゲルは発熱し、同時にゲル内に含まれるドキソルビシンを放出した。一方、交流磁場を印加せず、生理活性食塩水中に静置するだけでは、ドキソルビシンの放出はほとんどみられなかった。さらに、動物実験において上記の磁性流体の生体内でのゲル化を確認した。マウスの皮下に上記の磁性流体を投与したところ、瞬時にゲル化することを確認した。また、腫瘍を有するマウスに上記の磁性流体を投与したところ、腫瘍内で瞬時にゲル化することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画により問題なく目的とする特性を有する物質を作製することができたため、順調に研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ順調に研究を遂行することができており、平成27年度中に最も困難と思われた腫瘍内で瞬時にゲル化する磁性流体の作製に成功した。このため、今後も実験計画に従い研究を遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりもスムーズに研究が進んだため、消耗品使用量を減らすことができた。このため、当該助成金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度も助成金は細胞培養用試薬や器具、実験動物などの消耗品に使用することを予定している。
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Research Products
(6 results)