2015 Fiscal Year Research-status Report
活性気液吸着交換材を充填した蒸留塔におけるトリチウム水濃縮分離の高効率化の研究
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15K14281
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
深田 智 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (50117230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トリチウム / 蒸留 / 吸着 / 同位体分離係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度、放射性トリチウムを含む水の蒸留装置を組み立て,今年度新たに整備された学内放射性同位元素取扱実験室にてトリチウム濃縮実験を行なった。本研究の特徴である触媒機能を有した充填材、粒子径2.8mmが同じで比表面積の異なるシリカゲル5種類とNaA型とNaX型ゼオライト粒子、比較のため吸着不活性のガラスビーズを用意し、充填高さ59cm塔形1.6cmに統一し蒸留操作を行ない,再沸器と凝縮器のトリチウム濃度を液体シンチレーションカウンターで一定時間おきに測定し、全段同位体分離係数を求め比較した。蒸留条件は全還流100oCで1気圧であり、Fenske式と比較し,ガラスビーズで平衡分離係数が1.028、NTUは加熱率に少し依存し4.2~5.6と上昇する事を見いだした。吸着性あるシリカゲルでは比表面積が大きくなるにつれ、またゼオライトではNaA型よりNaX型で最大の分離係数が得られた。このように吸着性がある吸着剤を充填すると、蒸留塔内でガラスビーズと同じHTUが維持され,塔内の平衡分離係数が,吸着同位体効果により増加できる事が分かり,蒸留塔の塔高さや還流量を減らせる事が分かり,汚染水のトリチウム除染に利用できる事が分かった。このことは、本研究者が最初に見いだした事であり,極めて大きな成果と考えます。現在対策が急がれている福島第1原子力発電所トリチウム汚染水処理に利用する事が有効であると考える。 研究初年度であるにも拘らず,原子力学会で秋と春に2回発表し、中国や韓国、ロシアを含めたアジア全体及び米国のトリチウム関連の研究者が集まったAPSOT-1国際学会で口頭発表した。また関連研究成果を国際特許として申請した。萌芽研究の趣旨である、これまで世界で誰も試みなかった同位体分離法を新たに提案実証する事ができ、その成果を国内及び国際学会等で発表し、さらに特許申請にまで進める事ができ、今後の更なる研究成果が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度であり,日本原子力学会2015年秋と2016年春会に研究代表者が口頭発表するとともに2015年11月中国四川省綿陽市で開催されたAPSOT(Asia-Pacific Symposium on Tritium science)国際会議で英語口頭発表し、研究の趣旨と内容を説明した。萌芽研究で当初期待した吸着性能を有した充填材を使い、蒸留操作をおこなうことにより、塔内の平衡分離係数が増加する事が実験で明らかに証明された。国際特許2件を現在申請中であり,手続きを進めている。 研究初年度として十分な結果を得る事ができ、また現在2016年4月米国サウスカロライナ州チャールストン市で開催されるトリチウム国際学会でも英語口頭発表を予定し,既に予稿を送り、口頭発表が学会の3日目に予定されている。査読付き論文も同時に投稿中であり,初年度としては非常に研究の進展が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に吸着剤の種類を変えて蒸留分離の有効性を検討したところメソポーラスシリカ部に高い吸着能と同位体効果が存在する事が分かり,それを多く内包するNaX型ゼオライトに注目して吸着蒸留法を検討している。しかし実際の工業規模の蒸留装置は大型化が必要であり,特に通常の充填材では圧力損失が大きくて,数十メートルの高さの蒸留等が必要となる。またフラッでイングが起こらない条件を明確にし,気液接触を有効に進めるための新規形状の充填材が必要となる。 研究初年度は、まず原理実証のため吸着性能を有する材料を有する球形粒子材料を蒸留塔に使った場合、これまで平衡分離係数がH2OとHTOの飽和蒸気圧比で一定と信じられていた発想を覆し、吸着剤を充填する事により分離係数を増加させる事がw借り,また理論的にも、吸着と脱着が同時に異なった場所と時間で生じる事を考慮してDanckwertsの表面更新説で説明できる事を明らかにした。 次年度では圧力損失小さくするため、既成のSulzer 規則充填材に吸着性質を持たせる事ができるか、あるいは不規則充填材としてRaschig ringに吸着性能を持たせる材料をあらたに製作し、これを用いてトリチウム水の蒸留による同位体分離ができるかを実験で調べる。結果を2016年米国サウスカロライナ州のチャールストン市で開催されるトリチウム国際学会で発表する予定で、さらに新規特許を提出するとともに、国内学会で発表する。
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Causes of Carryover |
研究初年度に小型装置を学内で製作実験し,同位体分離実験したところ、着実な分離性能が得られ,次年度以降に予定した大型装置を睨んだ圧力損失の小さい充填材による分離実験装置の準備をするため,当初次年度製作を考えていた初年度予算を次年度分に合わせて,実験装置製作に使用する。また2016年4月に予定されている米国サウスカロライナ州チャールストン市で開催されるトリチウム国際会議で発表するが、その旅費を初年度に計画していた旅費を転用する事により,次年度実験計画のスムーズな実行が可能となる様にした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記にある様に,2015年の経費を2016年4月に開催されるトリチウム国際学会への出張旅費使用、参加登録費使用のため。さらに2016年に予定する蒸留装置を真空蒸留装置に改造する費用、おもに真空ポンプやバルブの購入,および圧力損失の小さい充填材の製作費用に使用する。
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Research Products
(12 results)