2015 Fiscal Year Research-status Report
上皮幹細胞のがん化過程における活性酸素によるチェックポイント制御機構の解明
Project/Area Number |
15K14390
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
岡本 康司 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80342913)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
成熟組織の正常幹細胞では、幹細胞のROS等のストレスレベルが低く保たれているが、防御しきれない強い侵襲が働くと幹細胞増殖の抑制に働くと考えられる。ROSレベルは発がん過程で上昇する事が知られているが、最近我々は、大腸がん等の上皮由来がん幹細胞において、ROSレベルが上昇する事、高レベルのROSが細胞増殖にむしろ促進的に働く事を見出した。そこで、本年度は、大腸がん幹細胞におけるROSレベルの変動と、幹細胞の増殖との関係をさらに精査した。また、大腸がんに加えて、卵巣がん由来のがん幹細胞を樹立し、同様の手法で、ROSレベルの変動を解析した。その結果、両方のがん幹細胞において、細胞の増殖能とROSレベルの間に明らかな相関が認められた。また、抗酸化作用を有する化合物の投与によるROS産生の低下により、がん幹細胞の増殖抑制及び細胞死の誘導が認められた。従って、がん幹細胞におけるROSの誘導は、細胞増殖にとって必要と考えらえた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、我々が発見した、大腸がん幹細胞の増殖に伴う過程におけるROSの上昇について、そのメカニズム及び発がんにおける意義を理解する事を主目的とするが、本年度の研究において、大腸がん幹細胞のみならず卵巣がん幹細胞においても、増殖に伴うROS上昇を認める事により、その普遍性について理解を深める事が出来た。これらは、申請書の内容を超えた新しい知見であり、がん腫の壁を超えた新たな発見である。一方、正常幹細胞の解析については、その培養系の確立が必要であり、技術的検討を続けている所であり、さらなる進展が望まれる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、正常細胞において同様の解析を行い、同様なROSの上昇が認めらるか検証し、発がん過程におけるROS上昇の意義を明らかにする。これらの研究を通じて、正常幹細胞におけるROS依存的な細胞増殖の抑制、及び幹細胞のがん化に伴う抑制能の消失を解析する事により、ROSチェックポイントの分子的基盤を解明する。本研究において、幹細胞のがん化と、ROSチェックポイントの関連を明らかにする事を通じて、ROSが幹細胞制御にもたらす重要性を確立する事を目指す。
|
-
[Journal Article] Establishment and characterization of an in vitro model of ovarian cancer stem-like cells with an enhanced proliferative capacity.2016
Author(s)
Ishiguro T, Sato A, Ohata H, Ikarashi Y, Takahashi R, Ochiya T, Yoshida M, Tsuda H, Onda T, Kato T, Kasamatsu T, Enomoto T, Tanaka K, Nakagama H, Okamoto K.
-
Journal Title
Cancer Research
Volume: 76
Pages: 150-160
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-