2015 Fiscal Year Research-status Report
T細胞受容体遺伝子導入T細胞を用いたNeoantigen 解析システム
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15K14403
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80273358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 隆二 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), その他部局等, 室長 (70373470)
松下 博和 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80597782)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / T細胞受容体 / がん抗原 / 次世代シーケンサー / ネオアンチゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、抗腫瘍免疫応答において、治療効果に係る重要な標的抗原は、既知のがん抗原(共通抗原)に加えて、個々の腫瘍特異的な遺伝子変異産物 、すなわち新生抗原(Neoantigen)であることが明らかになってきた。新生抗原を標的とした免疫治療を実現するためには、新生抗原と新生抗原特異的T細胞の両者の同定が必要である。 平成27年度は、次世代シーケンサーを用いたTCR遺伝子配列の解析法を確立した。腫瘍特異的T細胞を検出するためのシステム構築にむけて、NY-ESO-1ワクチン治療を受けた患者の末梢血中のリンパ球から、限界希釈法を用い2つのNY-ESO-1特異的CD8T細胞クローンAおよびBを樹立し、そのTCR遺伝子配列を同定した。ワクチン治療前、治療中、治療後の患者末梢血中のリンパ球のNY-ESO-1特異的TCR遺伝子配列を次世代シーケンサーで解析した。末梢血中の全リンパ球から得られた1.8×10*6リードのTCR遺伝子配列中、NY-ESO-1特異的CTLクローンAのTCRのリード数は1.39×10*4(1.2%)クローンBのリード数は13(0.0007%)であった。TCR遺伝子解析法は、従来の細胞生物学的な免疫モニタリング法と比較して、非常に定量的であり、かつ高感度であり、TCR遺伝子解析法を用いて、腫瘍免疫応答を詳細に解析することが可能であることを明らかにした。 同時に、新生抗原(Neoantigen)を解析するために、次世代シーケンサーを活用して、個々の患者レベルでの遺伝子変異を同定し、患者毎にMHCクラスI/II分子に結合する変異アミノ酸ペプチドをin silicoのアルゴリズムで予測し、NeoAgの候補とした。本研究により、次世代シーケンサーを用いたTCR遺伝子配列の解析技術と、腫瘍特異的neoantigen同定のためのシステムを構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.次世代シーケンサーを用いたTCR遺伝子レパトアの解析:効率よいTCR遺伝子クローニングシステムを構築するため、まず次世代シーケンサーを用いたTCR遺伝子シーケンスシステムを構築した。NY-ESO-1fペプチドワクチン治療を実施した患者の末梢血単核細胞(PBMC)から、mRNAを抽出し、オリゴdTプライマーを用いた逆転写後に5’末端にアダプターを結合させ、TCRのC領域に設定したプライマーとのペアで全長に近いTCRを増幅させた。増幅させたTCR遺伝子産物をプールして次世代シーケンサーで解析した。TTCRα鎖とβ鎖の抗原決定領域であるCDR3配列を解読した。得られたNY-ESO-1特異的なTCR遺伝子配列を元に、NY-ESO-1ペプチドワクチンの投与を受けた患者の末梢血中のNY-ESO-1特異的免疫応答の動態を解析した。 2. 新生抗原(Neoantigen)の同定:新生抗原を同定するために、腫瘍と正常組織のDNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて全Exomeシーケンスを行い、腫瘍に認められる遺伝子変異を検出した。アミノ酸変異を伴うミスセンス変異を含んだ領域をIEDB Analysis resourceのMHCクラスI結合予測アルゴリズムを用いて、IC50<150 nM(候補が少ない場合は500nMまで広げる)のペプチドをT細胞エピトープの候補(Mutanome)としてペプチドを合成し、TCR遺伝子導入レポーター細胞のアッセイに用いる。15名の肺がん患者において、COSMICデータベースやTCGAの情報から得られた遺伝子変異の情報と、個々の患者において同定された体細胞遺伝子変異に基づくneoantigenを比較し、個別の対応が必要であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
がん細胞やその周囲の環境による免疫抑制性の環境により、腫瘍内に存在する腫瘍特異的T細胞(TIL)の増殖は阻害されていることが多い。腫瘍特異的な免疫応答が誘導されている患者においても、多彩な免疫抑制メカニズムによって、腫瘍特異的なT細胞の増殖や活性化が抑制されている。そこで、本研究において、平成27年度に確立したTCR遺伝子解析技術と、neoantigen同定システムを活用し、腫瘍特異的T細胞を含んだTILからT細胞受容体(TCR)遺伝子をクローニングし、増殖能を持ったT細胞株に遺伝子導入して腫瘍特異的T細胞を再構築し、その細胞を用いて新生抗原を同定する。また、そのTCR遺伝子導入細胞を用いた新生抗原解析システムを構築することを目指したい。。新生抗原には、ミスセンス変異以外にも、スプライスの異常や、ストップコドンの異常、フレームシフト変異、UTR領域からの遺伝子発現など、Exomeシーケンス/ MHCクラスI結合予測アルゴリズムでは検出できない新規タンパク質由来のペプチドががん抗原となる可能性が否定出来ない。そこで、Exomeシーケンス法でエピトープが同定できない場合は、がん細胞由来のcDNA発現ライブラリーを作製し、MHCクラスⅠ分子を発現するCOS細胞に遺伝子導入する。Jurkat/TCRレポーター細胞をバイオセンサーとして、新生抗原をスクリーニングする。
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[Journal Article] Identification of Individual Cancer-Specific Somatic Mutations for Neoantigen-Based Immunotherapy of Lung Cancer.2016
Author(s)
Karasaki T, Nagayama K, Kawashima M, Hiyama N, Murayama T, Kuwano H, Nitadori J, Anraku M, Sato M, Miyai M, Hosoi A, Matsushita H, Kikugawa S, Matoba R, Ohara O, Kakimi K, Nakajima J.
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Journal Title
J Thorac Oncol.
Volume: 11
Pages: 324-333
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Detection and Tracking of NY-ESO-1-Specific CD8+ T Cells by High-Throughput T Cell Receptor β (TCRB) Gene Rearrangements Sequencing in a Peptide-Vaccinated Patient.2015
Author(s)
Miyai M, Eikawa S, Hosoi A, Iino T, Matsushita H, Isobe M, Uenaka A, Udono H, Nakajima J, Nakayama E, Kakimi K.
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Journal Title
PLoS One.
Volume: 10
Pages: e0136086.
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Phase Ia Study of FoxP3+ CD4 Treg Depletion by Infusion of a Humanized Anti-CCR4 Antibody, KW-0761, in Cancer Patients.2015
Author(s)
Kurose K, Ohue Y, Wada H, Iida S, Ishida T, Kojima T, Doi T, Suzuki S, Isobe M, Funakoshi T, Kakimi K, Nishikawa H, Udono H, Oka M, Ueda R, Nakayama E.
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Journal Title
Clin Cancer Res
Volume: 21
Pages: 4327-4336
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] The detection and tracking of NY-ESO-1-specific CD8+ T cells by next generation sequencing of human TCRB CDR3 rearrangements.2015
Author(s)
Manami Miyai, Shingo Eikawa, Akihiro Hosoi, Tamaki Iino, Hirokazu Matsushita, Midori Isobe, Akiko Uenaka, Heiichiro Udono, Jun Nakajima, Eiichi Nakayama, Kazuhiro Kakimi
Organizer
第19回日本がん免疫学会総会(ICCIM2015)
Place of Presentation
伊藤国際学術研究センター(東京都文京区)
Year and Date
2015-07-09 – 2015-07-09