2015 Fiscal Year Research-status Report
組織培養を利用した周縁キメラ解消によるキク突然変異の原因遺伝子の探索
Project/Area Number |
15K14648
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 道夫 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80355718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 洋平 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00746844)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 園芸学 / 花色 / 突然変異 / 遺伝子 / 周縁キメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はキクの枝変わり品種間の変異の原因遺伝子の効率的な解明を行うことを目的として、枝変わりの周縁キメラ構造を組織培養により解消した上でカスタムアレイおよびRNA-seq法により遺伝子解析を行うものである。27年度は異なる花色変異を有する3つの枝変わり品種群、マーブル系9品種、デージー系4品種、パラゴン系2品種を開花させ、各品種の開花直前あるいは開花時の筒状花を材料として表面殺菌後、植物ホルモンとしてBA濃度を2.0mg/Lとして、NAA濃度を0.2mg/Lと2.0mg/Lの2段階としたMS寒天培地に置床し、再分化植物体を誘導した。すべての枝変わり品種群においてNAA濃度を0.2mg/L、BA濃度を2.0mg/Lとした培地で再分化率が高い傾向が、また、枝変わり品種群の比較ではマーブル系、パラゴン系、デージー系の順に再分化率が高くなる傾向が認められた。供試した3つの枝変わり品種群のすべてから周縁キメラ構造を解消したと思われる再分化シュートを誘導することができた。再分化シュートが生じた培養物はNAA0.02mg/Lを添加したMS寒天培地に移植し、再分化シュートを伸長させた上で、メトロミックス360を充填したプラグトレイに挿し芽し順化中である。また、各枝変わり品種群の元品種であるピンクマーブル、ピンクデージー、パラゴンを材料として、未展開葉部からゲノムDNAを抽出し、黄色の花色変異に関わるキクのカロテノイド酸化開裂酵素(CmCCD4a)遺伝子ホモログの予備的解析を行った結果、品種ごとに異なる種類のホモログが見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画で旧農研機構花き研究所で保存中のマーブル系9品種由来の周縁キメラ解消植物体を用いて遺伝子解析に取り組む予定であったが、植物材料が保存中に枯死してしまっていたことが判明し、27年度に改めて再分化植物体を誘導する必要が生じた。そこで、27年度にマーブル系9品種も含めてデージー系4品種、パラゴン系2品種からL1層由来の再分化植物体の誘導を行い、これまでに順調に再分化個体が得られており、開花特性の調査を準備中である。以上のようにマーブル系品種における遺伝子解析が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は27年度に得た小花培養由来個体を開花させて、L1層由来の全層変異体を選抜する。得られた全層変異体および培養元品種の花色、葉色等を色彩色度計を用いて調査する。その後、全層変異体を材料として、旧農研機構花き研究所で作成されたキクタニギク由来の60Kx8カスタムアレイおよびRNA-seq法を用いて花色変異の原因遺伝子の候補を探索する。具体的には開花期の花弁を材料にしてRNAを抽出し、キクタニギク由来のカスタムアレイを用いて全層変異体間で異なる発現を示す遺伝子を絞り込む。また、Illumina社HiSeqによるRNA-seqを行い、同じく全層変異体間で異なる発現を示す遺伝子を抽出する。両者の結果を総合し、アントシアニンの発現の有無、アントシアニンの発現の濃淡、カロテノイドの発現の有無の原因遺伝子を絞り込む。加えて、候補原因遺伝子の発現がみられない変異体において、原因遺伝子近傍の遺伝子配列を調べ、トランスポゾン等の挿入などについて解析する。
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Causes of Carryover |
当初、花き研究所で保存されている周縁キメラ解消変異体を材料として遺伝子解析を行う予定であったが、保存中に枯死していたことからマーブル系についても改めて小花培養由来の再分化植物体を誘導した。28年度にマーブル系と併せてデージー系、パラゴン系について、開花特性の解析および遺伝子分析に取り組む。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子解析についてはカスタムアレイおよびNGSによる解析を予定しているが、それぞれの解析にはかなりの費用を要することから、これまでに得られているマーブル系、デージー系、パラゴン系品種由来の再分化植物体の中から効率よく遺伝子解析用の材料を選定して解析を進める予定である。残り1年間でこれまでの計画の遅れは取り戻すことができ、研究期間中に解析を終えることができる見込みである。
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