2015 Fiscal Year Research-status Report
デイゴの萎凋・枯死現象にデイゴヒメコバチの虫えい形成はどう関わっているのか
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15K14757
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒田 慶子 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20353675)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | デイゴヒメコバチ / Fusarium / 木部変色 / 通水阻害 / 軟腐症状 / 壊死 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究方法:1) 外見健全なデイゴ,ゴール(虫こぶ)形成の少ない段階から多い個体,萎凋直前と推定される個体から試料を採取し,葉・枝・主幹の断面の観察,解剖による顕微鏡観察を行うと共に,各部位から微生物の検出を行った。2) 未寄生の葉や葉柄について,微生物(内生菌)の保持状況を確認し、デイゴヒメコバチの産卵・寄生に伴う微生物感染の可能性を検討した。病徴発現に関与する可能性がある微生物について分類・同定を進めた。3) 樹木細胞の壊死や水分通導の停止の進行について、解剖学的手法によって観察を進めた。 研究成果:1)葉がほとんど脱落した激害木では、樹幹内に木部変色が認められた。特に樹幹基部では横断面全体に変色が広がっていた。変色部からはFusarium 属菌が優占的に検出された。2)Fusarium spp.は木部の変色部から優占的に検出されたが、デイゴヒメコバチによるゴール形成の認められない葉の葉柄からも同属の菌が検出された。これらの菌が同種であるかどうか確認するため、7株の塩基配列を解析中である。3)木部の変色は大枝と幹に認められた。変色部には顕微鏡下で菌糸の分布が観察され、組織からの分離・培養によってFusariumの分布と重なることがわかった。このことから、木部の変色は、菌の活動に対して木部細胞が防御反応を起こした結果であると推察した。このような変色域では水分通導が停止していることが知られている。水分通導と枯死および軟腐症状の発生について、次年度に詳しく検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に挙げた実験項目はすべて実施し、成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
(2)デイゴ個体の寄生による生理的変化と枯死原因に関する検討(継続) 1) デイゴヒメコバチの虫体に微生物が保持されているかどうか,確認する。その結果と,デイゴの組織から検出された微生物との関連性を検討する。2) 寄生蜂の産卵・寄生後の樹木の生理的変化について明らかにする。 (3)発病・枯死メカニズムの検討と被害軽減のための対策 1) デイゴヒメコバチによる樹木の生理的撹乱または微生物感染と樹木の枯死の間に起こる現象を明らかにし,3つの仮説の妥当性について検討する。(a)寄生により病原微生物が感染し水分通導阻害~枯死を起こした。(b)寄生に伴う樹木生理の異常により,内生菌が活性化,あるいは病原微生物の感染が容易になった。(c)寄生が樹木細胞に生理的異常を引き起こし,枯死した。2) 原因を確定すると共に,被害軽減のために効果的な手法を提案する。
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Causes of Carryover |
沖縄県で枯死被害が進んで種子が採取が困難になり、接種実験用の苗の入手が困難になった。次年度実験用の苗木や挿し木用の枝の調達のため、調査旅費を残した。また、苗木を神戸で育成することになり、栽培温度を25℃に保つために照明付きのグロースチャンバーが急遽必要になった。そのため実験補助の雇用を中止し、次年度に予算を残すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
苗木や挿し木用の枝入手のための旅費に使用する。また、苗木の育成促進には25℃の加温を要することから、購入予定であったフリーザーの購入を中止し、その費用と残した費用を合わせて、照明付きのグロースチャンバー(インキューベータ)を購入したい。
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