2015 Fiscal Year Research-status Report
環状ジアリールヘプタノイドはアクチノリザル共生のシグナル物質か?
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15K14770
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
河合 真吾 静岡大学, 農学部, 教授 (70192549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 夕子 静岡大学, 農学部, 助教 (90638595)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アクチノリザル共生 / シグナル物質 / フランキア |
Outline of Annual Research Achievements |
根粒形成により優先的に窒素源を獲得できるアクチノリザル樹木とフランキアの共生の初期段階に関わるシグナル物質の特定と水耕栽培法の確立を行った。 1.オオバヤシャブシ環状ジアリールヘプタノイドのフランキア及び実生生長への影響の検討 申請者は、オオバヤシャブシ-フランキア土壌栽培法へのオオバヤシャブシ(特に根部)のメタノール抽出成分の添加が実生の生長と根粒形成を促進することをすでに確認していることから、本研究では、当研究室でオオバヤシャブシから既に単離済みの環状ジアリールヘプタノイドをメタノール抽出成分の代わりに添加することが根粒形成に及ぼす影響を検討した。その結果、メタノール抽出成分と同様な根粒形成促進活性を示すことを確認した。さらに、本環状ジアリールヘプタノイドが、根部に存在するかどうかLC-MSを用いて定性的に確認したところ、この化合物が存在することが確認され、環状ジアリールヘプタノイドが、シグナル物質の一つである可能性を確認した。 2.フランキアの共生現象である根粒形成を可視化できる水耕栽培法の確立 オオバヤシャブシの栽培には、混合土壌を用いているため、根の経時的な成長量や根粒形成観察することは不可能であった。そこで、連携研究者の山中が確立した、根の成長過程やフランキアによる根粒形成を非破壊的・経時的にその場で(in situ)観察することを可能にした、水耕栽培法を適用した。その結果、サンプル管を利用したオオバヤシャブシ栽培システムが確立され、地上部および根茎部の成長促進が可視化でき、さらに根茎部分へのフランキアの感染から根粒形成に至る根毛の萎縮など根系組織の連続的な変化の観察が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土壌栽培系において、環状ジアリールヘプタノイドの添加が、フランキアとオオバヤシャブシの根粒形成に影響してることを根粒数を数えることで証明でき、また、この化合物が根部に存在することも確認した。本結果は、11月にインドネシアバンドンで開かれた第7回インドネシア木材学会国際学会ならびに3月に名古屋大学開かれた第66回日本木材学会でポスター発表した。日本木材学会では優秀ポスター賞を受賞した。 一方、水耕栽培系については、連携研究者である山中博士の助言を受けて、サンプル管での栽培技術を確立できた。しかしながら栽培の途中で、植物体葉の黄変や雑菌のコンタミなど、植替えの時期・栽培方法、フランキアや抽出成分の添加時期など、再検討するべき課題が見つかった。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度に引き続き、安定した水耕栽培系の確立を目指す。改良する点として、実生から本培養へ移植する際の本葉の数(生長時期)の再検討に加え、液体培地中の窒素濃度、光量など、オオバヤシャブシが安定して成長する条件を検討する。 さらに、平成28年度は、フランキア側から分泌されるシグナル物質についても検討を行う。実験としては、環状ジアリールヘプタノイドを含む樹木シグナル物質をフランキア培養液に添加し大量培養・凍結乾燥を行ない、一方では有機化学的手法で化合物の特定を進める。凍結乾燥残渣の一部は、ヘキサン、酢酸エチル、ブタノール、水等で逐次抽出・分画する。得られた残渣および各抽出物を、実験2で確立した水耕栽培中の植物実生苗に添加し、根毛の萎縮や根粒形成を連続的に観察する。根毛の変化が見られた画分については、カラムクロマトグラフィーやHPLCによる分画を進めファクターを単離・精製を試みる。フランキアには、根粒研究で先行するマメ科根粒菌が分泌するキリンオリゴ糖とは別種のリポオリゴ糖がファクター(エリシター)として分泌されている可能性が高いと推定されている。分担者である米田博士は、オリゴ糖およびキチン系多糖双方の取り扱いに長けており、化合物の精製・構造決定などは最も得意とする分野である。
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Causes of Carryover |
国際学会への参加を計画していたのが、多忙につき不可能になったことが一番大きな理由である。また、実験補助者の採用を予定していたが、優秀な卒論学生の働きで採用する必要がなくなった点も大きいと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、国際学会への参加を計画中である。また、本年度は大量栽培など実験補助が必要であることから、実験補助者の採用についても本年度使用額として計上したい。
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Research Products
(3 results)