2015 Fiscal Year Research-status Report
雌/非還元型、雄/還元型の配偶子形成をする四倍体フナの減数分裂機構解明
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15K14786
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒井 克俊 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (00137902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 貴史 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (10400003)
山羽 悦郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60191376)
村上 賢 麻布大学, 獣医学部, 教授 (80271360)
鈴木 紘子 群馬県水産試験場, 生産技術係, 研究員 (00450388)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水産学 / 農林水産物 / 発生・分化 / バイオテクノロジー / 遺伝学 / クローン / 倍数体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.倍数性と頻度:城沼(群馬県館林市)に由来する群馬県水産試験場(前橋市)飼育♀ギンブナ集団の倍数性をフローサイトメトリー法で解析した結果、二倍体(2n)1尾、三倍体(3n)78尾、四倍体(4n)12尾、高2n異数体 5尾、高3n異数体 5尾の頻度であった。飼育♂集団13尾はすべて4nであった。4n♀10尾と同♂13尾について、RAPD-PCR法によるDNAフィンガープリント(DNA-FP)分析を行ったところ、16プライマーで多型が得られた。4n合計23尾はすべて個体毎に異なるDNA-FPを示し遺伝的に異なった。mtDNAには2つのハプロタイプが認められたが、3n、4n♀♂はいずれのハプロタイプにも出現した。 2.非還元4n卵形成機構:4尾の3n♀より採卵し、キンギョ♂精子を媒精したところ、うち2尾は3n子孫のみを、1尾は3n、4n子孫両方を、1尾は4n子孫のみを作った。これらのDNA-FP解析は3nは遺伝的に同一クローンであるが、4nは精子核を受け入れ多型的であることを示した。4n♀より、卵巣を摘出し、卵母細胞培養と卵核胞単離を行ったが、良好な減数分裂染色体像の観察にはいたらなかった。 3.還元2n精子形成機構:2014年に4n♀から得た卵にキンギョUV照射精子を授精して作出した雌性発生魚を1月間0.1μg/Lのメチルテストステロン入り飼育水に浸漬したところ、人為性転換に作成した。これらは予想と異なり還元2n精子は作らなかった。これら性転換4n♂は鞭毛に異常をもち、頭部直径の大きい(3.9-4.2μm:対照キンギョは3.0-3.2μm)異数性精子(1n-2n)を形成した。これら精子でキンギョ卵を授精したところ0.6-4.9n子孫が生じ、これらはすべて奇形で孵化しなかった。 4.雌雄差の分子機構:性転換♂が予想に反し2n精子を形成しなかったため、検討は次年度にもちこされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
群馬水試♀親魚集団に2n、3n、4n、異数体が存在すること、4nには雌雄がいること、個々の4nは遺伝的に異なることが判明した。しかし、最適産卵期を逃したため、多くの3n及び4n♀由来の卵に、キンギョ精子、4n♂の2n精子を授精する実験ができなかった。また、十分な数の成熟♀が利用できなかったため、卵母細胞培養による卵核胞単離による減数分裂染色体像の観察が困難であった。 自然の4n♂と同様に、4n♀からキンギョUV精子授精により得た雌性発生子孫を雄性ホルモン入りの飼育水に浸漬することにより作成した性転換4n雄は還元型2n精子を形成することを予想したが、これらは還元型の2n精子を作らず、異常形態を持つ異数性精子を形成した。このことが雌雄差の分子機構解明のための材料の不足をもたらしたが、同じ遺伝的組成を持ちながら自然の4n♂は還元型の2n精子を形成するのに対して、♀から性転換した4n♂は異常な精子形成をすることが判明した。 以上の様に計画通りに行かなかった部分もあるが、4n親魚の遺伝的解析による非クローン性の解明、キンギョ精子との受精のみで4n子孫を作る♀親魚の観察などの成果が得られ、次年度計画につなげることができたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
産卵期の早い時期に、人為採卵とキンギョ♂精子ならびに4n♂精子を用いた人工交配を試み、出来るだけ多数の3n♀、4n♀からの子孫を得て、その倍数性と遺伝特性を解明する。また、4n♀の卵母細胞より、卵核胞を多数得て、減数分裂時の染色体像を観察する。さらに、卵核胞崩壊以降に経時的に固定した卵の組織細胞学的な観察から、減数分裂時の染色体と分裂装置の挙動を観察する。 性転換4n♂は使わず、自然に生じた4n♂を材料として、精巣のフローサイトメトリーにより精原細胞、精母細胞、精細胞を分離し、精母細胞からは減数分裂像を観察する。 4n雌雄の生殖細胞を密度勾配遠心分離により分離し、これらの生殖細胞で発現するRNAを採取し、cDNAを合成し、雌雄で発現に差のある遺伝子候補を単離する。発現差のあるcDNAを同定し、その配列を決定するとともに、定量RT-PCR法を用いて発現動態を検討する。これにより減数分裂のオン/オフをコントロールする機構に迫る。
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Causes of Carryover |
分担研究者の都合により、予定していた学会への出張ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度春期のギンブナ類親魚の倍数性判別、DNA分析と産卵・交配実験、および成果物子孫の飼育実験の物品費に使用予定である。
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