2016 Fiscal Year Research-status Report
産地横断的及び縦断的品質評価の戦略;漢方生薬4品目について
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15K14969
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐々木 陽平 金沢大学, 薬学系, 准教授 (10366833)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生薬資源 / 国産生薬 / 品質評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
生薬は医薬品原料であることから安定した品質が要求される。しかし生薬は同時に、原植物の成育の過程では自然環境により、収穫後は人為的な加工条件を経ることにより必然的に品質のバラツキが生じるという性質を有している。すなわち生薬の品質は産地間や年次間で個々の正規分布でバラツキを有していることになる。これまでは個々(ある生産地の1年次分)の正規分布内での相対的な指標で評価されてきた。本研究課題では絶対的な指標の設定を目指し、産地間(横断的)や年次間(縦断的)での比較を計画した。さらにここで品質を左右する重要な加工工程が産地間で統一されていないことを重要視し、平成28年度はまず当帰に対して加工条件が品質に及ぼす影響を調べた。 平成28年度は計画通りに収穫物および生産物を得ることに成功し、前年度に引き続き品質評価の測定結果を蓄積した。測定は次のとおり。当帰に対しては主成分リグスチリド定量および糖類定量、芍薬に対しては主成分ペオニフロリン定量、地黄に対しては主成分カタルポール定量および糖類定量、麻黄に対しては総アルカロイド(エフェドリン、プソイドエフェドリン)定量である。当帰の品質に最も影響を与える加工条件は加温を伴うもみ洗い工程である。この温湯の温度と浸漬時間が産地間で異なっていることから、各条件による変動を測定した。40度から90度までの各温度では温度の増加とともにリグスチリドの減少、糖(特にグルコース)含量の増加を認めた。この結果より産地間(横断的)な比較では加工条件の違いも考量して品質評価の結果を理解する必要があることを明らかにした。平成29年度はこの点も踏まえてデータを蓄積していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石川県の当帰、地黄の原植物栽培地では安定して収穫物を得ることができるようになった。特に当帰については加工条件の検討が進み、品質との関係が明らかになりつつある。計画の4品目について、最終年度も評価できる見通しができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、当帰について加工条件が品質に及ぼす影響を検討した。産地間で加工条件が異なることは当初の計画には考慮されていなかった。このことは産地間(横断的)の比較に大きな影響があることが想定される。今後は産地間と年次間のいずれがバラツキが大きいのか、この点にも注意を払い研究を遂行していく。
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