2015 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の細胞、生体、病態における作用メカニズムの解明
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15K15073
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
池田 和博 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (30343461)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 呼吸鎖 / 超複合体 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアの呼吸活性はあらゆる細胞、組織において重要な役割を担っており、その機能障害はミトコンドリア病を含む、循環器障害、生活習慣病、脳機能障害、がん、老化など様々な病態に関連していると考えられている。申請者らは、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成を促進するCOX7RPを初めて報告したが、このようなミトコンドリア呼吸鎖超複合体の制御に関わる因子はほとんど解明されていない。本研究は、COX7RPの結合因子の探索、呼吸鎖サブユニットの細胞内動態の可視化、siRNAを用いた新規のミトコンドリア呼吸鎖超複合体の制御因子のスクリーニング等を行い、呼吸鎖超複合体の制御機構を解明し、培養細胞系とCOX7RPノックアウトマウスを用いた生体モデルを活用して検証し、超複合体と細胞機能ならびに各種疾患との関連を解き明かすことを目的とする。 本年度は複数の培養細胞株からミトコンドリア分画を調整した。また、これらの細胞に対して、低グルコース、低酸素などの処理を行って同様にミトコンドリア分画を調整した。これらのミトコンドリアを可溶化剤で処理した後、Blue Native Polyacrylamide Gel Electrophoresis (BN-PAGE)による2次元電気泳動を行い、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成などを解析した。COX7RP遺伝子改変マウスの骨格筋、脳などの各組織よりミトコンドリア分画を調整し、同様にBN-PAGEを用いて解析し、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成を解析した。COX7RPと結合する因子の解析として、免疫沈降法を用いて電子伝達系のサブユニットとの結合を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の培養細胞株を低グルコース、低酸素などの環境で培養し、ミトコンドリア分画を精製しており、これらの材料を用いて独自に改良したBN-PAGEによる2次元電気泳動を行い、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成システムを構築した。1次元目のBN-PAGE、2次元目のSDS-PAGEと複合体I(NDUFA9)、III(UQCRC2)、IV(COX4)などのサブユニットに対する抗体を用いたウエスタンブロット解析を組み合わせることで、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成を効率よく解析できるようになった。また、COX7RP遺伝子改変マウス由来のサンプルも用いて同様にミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成を解析している。さらに、COX7RPと結合する因子を免疫沈降法を用いて検討しており、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の解析を引き続き行い、各種培養細胞株ならびにそれぞれの刺激による特異的なミトコンドリア呼吸鎖超複合体の制御と呼吸活性の変化を明らかにする。この解析により、代謝、ホルモン、低酸素による超複合体の制御で特徴的な役割を担う遺伝子を明らかにする。この候補遺伝子に関しては、がん細胞におけるノックダウンもしくは過剰発現系を構築し、細胞増殖、移動能、低酸素応答、ホルモン応答などにおける作用を解析し、がん細胞における役割を検証する。また、COX7RP遺伝子改変マウスを用いた解析においては、高脂肪食負荷、絶食、ホルモン欠乏、運動負荷などの条件において、脳、内臓脂肪、褐色脂肪、骨格筋、心筋、肝臓、膵臓、骨などの各組織よりミトコンドリア分画を調整し、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成やターゲットとなるサブユニットの超複合体への取込みなどを明らかにする。COX7RPと相互作用する分子に関して、さらに解析を進める。ミトコンドリアに局在して機能すると考えられるミトコンドリア呼吸鎖のサブユニットとその調節因子、ミトコンドリア生合成・分裂・融合に関わる因子、脂肪酸酸化酵素などを対象にsiRNAを合成し、培養細胞に導入してミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成を解析し、未知の制御因子を探索する。以上の研究成果を統合して、ミトコンドリア呼吸鎖超複合体の細胞、組織、生体、病態における意義を解明し、臨床医学に応用できる分子標的を同定する。
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Causes of Carryover |
培養細胞ならびにCOX7RP遺伝子改変マウスを用いたミトコンドリアの調整とBN-PAGEを用いた解析を改良することにより、効率よくミトコンドリア超複合体の解析が行えるようになったため、蛋白の精製・解析、細胞培養などに必要な試薬・キット、チューブ、ピペットなどの消耗品が減少したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析対象とする候補遺伝子について、ミトコンドリア呼吸鎖のサブユニットとその調節因子、ミトコンドリア生合成・分裂・融合に関わる因子、TCAサイクルに関わる酵素、脂肪酸酸化酵素、アポトーシス関連因子、物質輸送に関わる因子をはじめ、その他のホルモン、シグナル、低酸素、低栄養環境に関与する遺伝子も対象として増加させて、siRNAの合成や定量的PCR法により解析を進めることにより、より広範囲にミトコンドリア呼吸鎖超複合体の形成を制御する未知の制御因子の可能性を探索することにより、最終年度(本年度)内に全て使用する。
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[Journal Article] miR-378a-3p modulates tamoxifen sensitivity in breast cancer MCF-7 cells through targeting GOLT1A2015
Author(s)
Ikeda K, Horie-Inoue K, Ueno T, Suzuki T, Sato W, Shigekawa T, Osaki A, Saeki T, Berezikov E, Mano H, Inoue S
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 5
Pages: 13170
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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