2015 Fiscal Year Research-status Report
発がん初期捕捉に基づく「正常発達逸脱によるがん発生機構」解明
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15K15079
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
門松 健治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80204519)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 癌 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児がんは遺伝子変異が極端に少ない。何故、遺伝子変異がないのにがんになるのか?エピジェネティック制御が予想されるが、その実態は未知である。この課題に迫るために、私たちはがん発生初期を捉える新しい技術開発を行った。すなわち、がん発生極初期の細胞のスフェア培養に成功した。これにより、神経芽腫モデルでは、がん化が組織学的に明らかでない胎児期中期に、がん形質の獲得が起こることを見出した。これを基盤に小児がんの発生機構を解くことが本研究の目的である。がん発生に重要な遺伝子群を同定し、エピジェネティック制御を解明し、新しいがん発生機構を明らかにする。そのために2つの異なるアプローチを行った。 まず、がん発生初期を捉えるスフェア培養を核に、エピゲノム、遺伝子発現等のデータから、がん発生初期に特徴的な遺伝子群の抽出を行った。MYCN下流遺伝子群をはじめ、きわめて特徴的な機能を持つ遺伝子群が1.5倍以上の有意な変化を示した。殊にヒストン修飾に関与する遺伝子群の変化が目を引いた。また、ゲノムレベルの異常はほとんど見られない一方、DNAメチル化に差異を見出した。 次に、神経芽腫発生に重要であることが既に知られているMYCNとの合成致死遺伝子同定に望んだ。shRNAライブラリーをMYCN増幅および正常細胞に感染させ、細胞増殖の程度に差がある遺伝子を探索した。その結果、約130個の遺伝子が候補として浮かび上がった。ここから、今後、(1)公共の予後データ(2)モデルマウスでの発現量(3)ドラッガビリティなどを指標にさらなる絞込みを行い、MYCNとの合成致死について評価を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、マウス神経芽腫腫瘍スフェア培養法を確立し、E13.5の時期からMYCN Tgマウス交感神経節からは継代可能なスフェアを培養でき、腫瘍形成能があることを明らかにした。そこで、野生型およびMYCN TgマウスのE13.5交感神経節スフェアについて遺伝子発現アレイを用いた解析を行った。その結果、MYCN下流遺伝子群をはじめ、きわめて特徴的な機能を持つ遺伝子群が1.5倍以上の有意な変化を示した。殊にヒストン修飾に関与する遺伝子群の変化が目を引いた。DNAメチル化をMBDシークエンスで解析すると野生型とMYCN Tgマウスとの間に差を認めた。プロモーター領域のDNAメチル化に焦点を当てて、それを遺伝子発現解析結果と組み合わせると、プロモーター領域のDNAメチル化が起き発現が抑制されている遺伝子の組合せ度数が患者の予後と強く相関することが分かった。従って、この結果はMYCN Tgマウスのヒト神経芽腫モデルとしての有用性を保障するものとなった。一方、E13.5交感神経節スフェアやMYCN Tgマウス腫瘍などを材料にゲノム変化をアレイCGH、エクソームシークエンスで解析したところ、ゲノムレベルの異常はほとんど見られず、この結果もヒト神経芽腫のデータと合致した。 次に、神経芽腫発生に重要であることが既に知られているMYCNとの合成致死遺伝子同定に望んだ。タグつきのshRNAライブラリー(16,019遺伝子を標的)をMYCN増幅(IMR32細胞)および正常細胞(SH-SY5Y細胞)に感染させ、細胞増殖の程度に差がある遺伝子を、次世代シークエンサーを用いて探索した。その結果、約130個の遺伝子が候補として浮かび上がった。 以上、計画は順調に進み、実りの多い成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
スフェアの遺伝子発現解析により、殊にヒストン修飾に関与する遺伝子群の変化が特徴的であることから、今後、ヒストンアセチル化・メチル化を標的としたCHIPシークエンスを行うことにより、解析を深化させられると考えている。また、ヒストン修飾に関与する遺伝子群から標的を絞込み、真にエピゲノムが神経芽腫発生を制御するのかを検証したい。特に、人為的エピゲノム変化によって野生型E13.5交感神経節スフェアをトランスフォームできるか、エピゲノム変化抑制によりMYCN Tgマウスの腫瘍形成を制御できるかに注目した実験計画を立てている。 一方、MYCNとの合成致死に関しては、約130個の候補遺伝子から(1)公共の予後データ(2)モデルマウスでの発現量(3)ドラッガビリティなどを指標にさらなる絞込みを行い、MYCNとの合成致死について評価を行いたい。より具体的にはMYCN増幅(これまではIMR32細胞)および正常細胞(これまではSH-SY5Y細胞)の細胞株を増やして、それぞれに対して候補遺伝子のノックダウンを施し、MYCNとの合成致死について評価する。加えて、肺がんなどMYC遺伝子(c-MYC)が増幅するがんについて同等の合成致死を示すなら、今後の創薬戦略にとって重要な情報となるので、この点も解析する。 上2つの成果を基に、組み合わせ探索のシュミレーションに利用できるか情報学的な分析も行いたい。
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[Journal Article] The 1,2-diaminocyclohexane carrier ligand in oxaliplatin induces p53-dependent transcriptional repression of factors involved in thymidylate biosynthesis.2015
Author(s)
Kiyonari S, Iimori M, Matsuoka K, Watanabe S, Morikawa-Ichinose T, Miura D, Niimi S, Saeki H, Tokunaga E, Oki E, Morita M, Kadomatsu K, Maehara Y, Kitao H
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Journal Title
Mol Cancer Ther.
Volume: 14
Pages: 2332-2342
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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