2015 Fiscal Year Research-status Report
ダイオキシンによる自閉症スペクトラム障害とミラーニューロン系活動との関連
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15K15244
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
西条 旨子 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (40198461)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダイオキシン / 自閉症 / 視線 / 小児 / 脳波 / 脳神経発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムの高濃度汚染地域における周産期ダイオキシン暴露と自閉症傾向との関連性を明らかにすることを目的として、ベトナム共和国ビエンホア市の元米軍基地周辺10地区に居住する母親から出生した新生児226名を追跡調査し、ベーリー発達尺度と自閉症スペクトラム障害尺度(ASRS)を用いた健診を、対象児が3歳になった時点で行った。また、この3歳児健診に参加した198名にアイトラッカーを用いた視線検査を行ない、自閉症児に特徴的な視線異常とダイオキシン暴露による発達障害との関連性を検討した。 視線検出には複数の子供の顔を含む画像を10枚用意し、各3秒間提示した時の視線の位置と滞留時間からヒートマップを作成することにより、視線を評価した。また、被験者には9名の自閉症あるいは言語発達障害のある児(自閉症ハイリスク群)が含まれていたため、これらの児を自閉症ハイリスク群とし、発達検査およびASRS検査結果の良好な18名の健常児群と、視線の位置や視線の停留時間を比較し、自閉症ハイリスク群に特徴的な視線分布を検討した。その結果、従来報告されてきた自閉症児の視線分布の特徴とは異なり、視線が写真の子供の顔、特に目に注がれているかどうかについての両群間での違いは認められなかった。しかし、自閉症ハイリスク群は健常児群と比べ、視線の密度が低く、視線の滞留時間が長い写真が少なく、対象物に関わらず、凝視することが少ないことが、健常児と大いに異なる点であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベトナムにおいて198名の3歳児に視線検査を実施することができ、その内自閉症のリスクが高い9名について、健常児との解析結果の比較もできた。しかし、脳波によるミラーニューロン系に特徴的な「MUリズムと呼ばれる脳波の抑制」を測定することができていないことから、「おおむね順調」と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
自閉症ハイリスク群について手の動きを見ている時の脳波測定を実施し、視線の異常とミラーニューロン系活動の関連性について、脳神経学的な実証を行う。 汚染地域における視線データの解析を全例について行い、視線密度や停留時間などの視線異常のパラメータと母乳中ダイオキシン濃度や生後3歳までの脳神経発達との関連性について社会経済的要因や児の在胎週数や出生体重、たばこやアルコールの影響などを調整して解析する。
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