2016 Fiscal Year Research-status Report
医療施設の役割と機能を生かす音環境のあり方を検討する
Project/Area Number |
15K15255
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小山 由美 日本大学, 薬学部, 講師 (50318458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽入 敏樹 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (70299981)
星 和磨 日本大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50373171)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医療施設 / 音環境 / スピーチプライバシー / リスクマネージメント / 音響特性 / 患者 / 医療情報 / 騒音 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療施設における音環境の在り方の検討には、患者が安心して治療に専念できる視点と周りを気にすることなく正確に医療情報を伝え聴くことができる視点が必要であり、そして医療が効果的・効率的に遂行できる業務環境と共存する視点が求められる。そこで稼働前の医療施設の音響調査を実施し、建築音響特性(音の伝わり方)の解析を行った。得られた結果を米国のFGIガイドライン2014(Guidelines FOR DESIGN AND CONSTRUCTION OF Hospitals and Outpatient Facilities:医療施設の設計と建築に関するガイドライン)に照らし評価すると、吸音率や遮音性能が基準値未満の室空間の存在が明らかになった。また基準を満たす室空間であっても、ドアを開けた状態で使用することによって、音環境の質が低下することが確認された。 医療現場の音環境の現状調査に向けて、①医療関係者への個別の聞き取り調査②模擬病棟で医療機器のアラーム音や足音等の音の伝わり方のシミュレーション実験③プライバシーを保護した環境音の測定方法の検討を行った。 医療関係者への聞き取り調査からは、音源となる医療装置や生活音等を抽出した。また、医療従事者同線の視点から、病室のドアの開閉が医療や業務効率に与える影響等について意見を得た。 模擬病棟でのシミュレーション実験は隣り合う多床室を想定し、医療機器アラーム音や生活音についての音の伝わり方と、ドアの開閉による音環境の変化について実験を行った。環境音の受け止め方は人によって異なる可能性があることから、聴感実験の必要性が指摘された。 プライバシーを保護した環境音の測定方法の検討は、既存の波形収録プログラムを工夫するだけではプライバシーが保護出来ないことが確認できたことから、デモ音源を作成し、話しの内容や単語が把握できない測定条件を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、医療空間における音の伝わり方と診察・療養・情報伝達に影響を与える音因子の関係を明らかにすることを目的としている。そのため、医療施設の音響基礎データを解析することがこの研究を進めるうえで重要であるが、測定したデータ数が予想を大きく上回る量であったことから、解析方法の確立と実解析に時間を要した。 臨床におけるプライバシーを保護した音響測定の手法の検討では、RIONの測定プログラムを使用して検討したが、既存のプログラムの範囲で工夫するだけではプライバシーが保護できないことが、検討の結果明らかとなった。そのため、急遽計画を一部変更し、臨床の環境音を模擬病棟で再現し、環境音の伝わり方を検討することとなった。そのため、専門知識を持つ協力者が参画し、医療現場で利用されている機器・装置音や生活音がどのように医療空間で伝わるかをシミュレーション実験にて検討した。また、プライバシーを保護した測定プログラムの開発が新たに必要となったことから、デモ音源を作成し、会話の内容は把握できないが環境音は同定できる手法の検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
医療施設及び模擬病棟における音響基礎データの解析結果、並びにシミュレーション実験に基づき、平成29年度は実臨床における音環境調査の実施を目標として検討を進める。 医療空間は壁やドアの遮音性能や吸音率の違い、レイアウトの違いにより音の伝わり方や響き方は異なる。しかし、実際の臨床現場には、医療装置のアラーム音や生活音等が複数存在し、またドアを開いたままにすることにより話しやすさ・聴き取りやすさ・快適さは変化することから、音環境の実態を把握するためには臨床における音環境測定が必要である。 そこで、プライバシーを保護した環境音の測定方法の検討を継続し、話しの内容や単語は把握できないが環境音は同定できる測定プログラムの開発を進める。 また医療装置のアラーム音や医療空間に発生する生活音を音源として、模擬病棟で音の伝わり方をシミュレーションした。現在研究協力者と共に、病棟を想定した医療環境音について快・不快等の聴感実験を進めている。 医療関係者への聞き取り調査の結果から、病棟における医療装置のモニター音やアラーム音は医療従事者にとって漏らさずに聞き取る必要性があることや、ドアの開閉には医療従事者同線を妨げる要素があることや、一方で患者のためにはドアを閉める必要性を感じていることなどが明らかとなった。そこで、環境音が問題となる要因を人的機能的側面から明らかにするため、医療従事者等を対象に部屋の使われ方(動線)や業務の優先順位について実態を調査する。
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Causes of Carryover |
プライバシー保護を前提とした臨床における音響測定の手法の検討では、当初RIONの測定プログラムを使用して検討したが、既存のプログラムを工夫して開発するだけではプライバシーが保護できないことが、検討の結果明らかとなった。このため新たに研究協力者としてスピーチプライバシーおよび音環境評価の専門家(清水寧先生、李孝珍先生)が参加し、共に研究を進めている。新規のプライバシー保護測定プログラムを検討する必要があることから、検討に時間が要しており、そのため費用は29年度に使用する計画である。 当初28年度に国際学会で報告を行う計画であったが、音響調査後のデータ解析に予想を超える時間を要し、またプライバシー保護条件の検討にも時間を要したことから、これらの研究報告は29年度に計画している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プライバシー保護測定・記録条件をいくつかのパターンで検討しており、29年度はこの条件をさらに検討し、自動処理プログラムの開発を目指す。wave fileデモ音源データを処理することでプライバシー保護が可能となる処理条件を決定する。それらの条件で処理プログラムをパソコン上で自動に実行するソフトを開発し、実際に音源がプライバシー保護されて処理されるかを確認する。プログラム開発は、業者に依頼して作成する計画である。 28年度に実施した医療関係者への聞き取り調査を基にして、環境音が問題となる要因を人的機能的側面から調べるため医療関係者へのインターネットアンケート調査を実施する計画である。インターネット調査には母集団がサンプリング可能なウェブアンケート専門業者に委託する予定である。 また、医療施設における音環境に関する研究結果を国際学会にて報告する予定であるため、外国旅費として使用する。
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Research Products
(2 results)