2015 Fiscal Year Research-status Report
臍帯血の抗原特異的低親和性IgEの発見と生後の高親和性化獲得機序の解明とその予防
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15K15371
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木戸 博 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 特任教授 (50144978)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アレルギー / IgE / 予防 / 抗原親和性 / 抗原感作 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の当初計画を予定通り実施して、以下の成果を得た。 (1)研究項目名:低親和性IgE抗体と高親和性IgE抗体の分別定量法の開発。低親和性IgE抗体と高親和性IgE抗体の分別定量を、固相化した抗原と可溶性抗原との間の競合的結合阻害による親和性評価と、caotropic試薬diethylamineによる結合親和性への影響の受け易さによる評価で検討を進め、低親和性IgE抗体と高親和性IgE抗体の分別定量が可能であることを明確にした。(2)研究項目名:母乳、血液、環境中の抗原定量法の確立。母乳中のアレルゲン量を測定するには、抗原・抗体複合体から抗原を解離させることが不可欠で、そのため抗原解離方法の検討を実施した。母乳の場合は、IgAからの抗原の解離にpapain処理が有効で、ほとんどすべての抗原がIgA抗体から解離して定量できることを明らかにした。一方血液の場合は、主に抗原との親和性の高いIgGであることから、抗原の回収が不十分で引き続きIgGの処理法を検討している。環境中のアレルゲンの定量法、乳児の頬に付着している抗原量の定量では、ELISAによる測定が可能となった。(3)研究項目名:低親和性IgEから高親和性IgEに変換する時期の同定と発症リスク評価。臍帯血から生後2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月までの検体で、母乳を介した鶏卵アレルゲン感作と人工栄養児でのミルクアレルゲン感作の実態を把握した。その結果、ほとんどの乳児が獲得する経口免疫トレランスには、イムノグロブリンクラススイッチが関与することが判明した。一方、湿疹のある乳児群ではIgG1→IgEへのクラススイッチが早期に強力に起きて、低親和性IgEから高親和性IgEへの変換が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要に記載したように、実施計画の3項目において、当初予定した研究が進展している。なお、2)母乳、血液、環境中の抗原定量法の確立において、血液のIgG抗体と抗原の解離反応は、予想に反して困難なことが判明して目標の達成には至らなかった。以上の理由から、概ね順調と判定した
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究成果を基盤に、平成28年度は当初の目標である 3)低親和性IgEから高親和性IgEに変換する時期の同定と発症リスク評価 における詳細な解析を実施する予定で、その準備はできている。特にほとんどの乳児が経口免疫トレランスを獲得する中で、5~6%の乳児が食物アレルギーを発症する理由が、本研究を通して初めて明らかになりつつある。最終年度として下記の3項目について成果をまとめる。 1)低親和性IgE抗体と高親和性IgE抗体の分別定量法の開発。測定方法が確立したことから、これを基盤に臍帯血から生後2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月までの親和性の変化を解析する。 2)母乳、血液、環境中の抗原定量法の確立。昨年の研究で血液のIgG抗体と抗原の解離反応は、予想に反して困難なことが判明して目標の達成には至らなかったことから、今年度は、papainに代わるタンパク質分解酵素を試してみたい。 3)低親和性IgEから高親和性IgEに変換する時期の同定と発症リスク評価。臍帯血から生後2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月までの検体を用いて評価することで、ほとんどの乳児が獲得する経口免疫トレランスでは、イムノグロブリンクラススイッチが関与し、湿疹のある乳児群では、経口免疫寛容のイムノグロブリンクラススイッチが障害され、IgG1→IgEへのクラススイッチが早期に強力に起きて、低親和性IgEから高親和性IgEへの変換が確認された。平成28年度は、症例を増やして、これらの事実を確認する。
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Causes of Carryover |
前年度未使用額の45,294円は、平成28年度3月末までに納品が完了しているが、支払いが平成28年度4月になったため、計上されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により、平成28年度3月末までに納品された45,294円分を、平成28年度4月に支払を完了する予定である。
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Research Products
(7 results)