2015 Fiscal Year Research-status Report
革新的な単球・マクロファージ系細胞制御法開発への挑戦
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15K15386
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
森尾 友宏 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30239628)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小児免疫 / アレルギー / 膠原病学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではiPS細胞を用いて単球の分化過程を分子レベルで明らかにし、未知の単球分化異常症の原因を明らかにすると共に、活性型(M1)・抑制型(M2)マクロファージの誘導と制御法を検討し、応用研究として真菌特異的T細胞の誘導によるマクロファージの活性化の実現性を検証することを目的としている。 本年度はまず分化過程における特性解析に先駆けて、ヒト骨髄細胞における分化経路について、東京医科歯科大学難治疾患研究所樗木博士Gの支援を得て、詳細な検討を行った。その結果、単球-樹状細胞前駆細胞(MDP)、顆粒球-単球前駆細胞(GMP)、共通樹状細胞(DC)前駆細胞(CDP)、共通単球前駆細胞(CMoP)などを表面抗原の差異で分離することができるようになった。それを用いて各分画の単離と、体系的発現解析に向けての準備を整えた。 単球・DC欠損症患者から、新規責任遺伝子が同定されたことが本年度の研究の成果である。本患者で分化系の解析を行い、さらに責任遺伝子産物の機能について多角的に検討を行った。実際には、患者由来EBV形質転換B細胞株を用いての体系的転写プロファイリングや、RiboClusterProfilerを用いての転写後遺伝子発現制御などを解析した。 さらに同遺伝子の機能についてはKnock in miceの作成や、iPS細胞の作成に着手をした。iPS細胞については、申請段階においてはOP9細胞を用いる分化系と、feeder freeシステムの両者を考えていたが、東京大学医科学研究所大津真博士との共同研究により、サイトカイン及び生理活性物質にのみ依存した分化系を用いることとした。患者由来iPS細胞の樹立に着手すると共に、Knock in iPS細胞のデザインも開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に経過しているが基盤技術となるiPS細胞からの単球、DCへの分化系にはまだ改良と工夫が必要である。実際には現在分化可能なものは、CD14陽性細胞であり、単球系の解析においては代表細胞とできるものの、DCは通常CD14陰性であり、DCのさらなる特性解析が必要となる。また分化過程においては少なくとも3-5ステップのサイトカインの切り替えが必要となっているが、その鍵となるポイントで、正常の骨髄における分化を模倣しているかは、今後の検討課題である。 いずれにしても今回同定した新規責任遺伝子異常による単球・DC欠損症の解析は、同細胞分化における鍵となる分子を明らかにするものと期待される。これらからのiPS細胞の樹立は着手したところであるが、本異常症以外の単球・DC欠損症の検体も入手しているところである。 いずれにしても、もう1つの重要な部分である、ヒト骨髄における単球・DC系の分化の解析についてはほぼ確立され、またコロニーアッセイも行える状況となっている。一方、これらの分化系における体系的遺伝子発現解析や、後成的変化の解析は、世界的にも情報が統一されておらず、独自にsorting、RNASeqを行う準備を整えている。 本年度に予定していたMo-Mφ活性化による真菌感染症制御に向けた免疫制御法の検討については、それぞれの真菌類における抗原とペプチドについて、リストアップを行っているところであり、まだ実際にペプチド刺激によるex vivo増幅の可能性については検証できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
萌芽的研究の括りの中で、今後進めていくべき課題は山積している。1年目に行った解析により、より基盤的な技術の改良と、それを用いた基本的データの収集が重要であることを再認識している。今後はそのような中で、単球分化異常を呈する患者由来iPS細胞を用いたMo-Mφ分化系の検討に注力したいと考えている。具体的には、健常者由来、新規責任遺伝子異常症、GATA2異常症患者から樹立したiPS細胞を用いて、単球・DC系に分化させ、ステップ毎における遺伝子発現解析を行うことで、鍵となるタンパク(転写因子、翻訳制御因子など)を詳らかにしたいと考えている。また同検証の中では、患者からiPS細胞を樹立するだけではなく、健常者由来のiPS細胞を用いてゲノム編集を行い、knock in細胞を作成する予定である。これにより基盤が一致した解析が可能になると考えている。未知遺伝子異常による単球・DC欠損症では、責任遺伝子探索を行うと共に、上記手法を駆使して、病態に迫る予定である。 M1, M2マクロファージについては、現在も様々な亜集団の報告が次々となされている状態である。今後の検討においては、今までの報告のあるそれぞれの亜集団の発現解析を元に、鍵となる転写因子やシグナルを探り、それをiPS細胞にも応用する予定である。現時点において、Mo, Mφ, DC活性化に関係するシグナル伝達因子や、転写因子を抑制する、siRNAやタンパクについては、用意を進めているところであり、一旦系が確立すれば、それらを用いて、単球やマクロファージの制御について検討を行いたい。さらに、現在解析中の新規・未知責任遺伝子は活性化等にも関与する可能性があり、その操作による制御についても模索したい。
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