2015 Fiscal Year Research-status Report
1細胞イメージングを使った放射線照射細胞の運命決定の解析
Project/Area Number |
15K15447
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
新美 敦子 群馬大学, 未来先端研究機構, 助教 (50508984)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 医学放射線生物学 / 染色体異常 / ゲノム不安定性 / 重粒子線 / 3Dライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
高線量放射線照射によって細胞はそのほとんどが死滅するが、ごくわずかな細胞は生存し増殖を開始する。放射線照射によりDNA損傷を受けた細胞は、損傷のタイプや程度に合わせて最適な修復及び細胞周期チェックポイント経路を選択し、生存または細胞死へ向かう。本研究では申請者が所属する群馬大学が新たに導入した次世代超高解像度顕微鏡OMXによる一細胞レベルでの3Dライブイメージング技術を用いることで、放射線照射を受けた細胞集団の中で、どのような細胞が、どのような経路を経て生存への道を辿ったかをDNA修復とチェックポイントの連携と合わせ追跡し、生存細胞の細胞運命決定までの経路を同定することを最終目標とする。 長時間のタイムラプスでは、タンパク質の蛍光ラベルが減衰することが問題となる。そこで本年度では、長時間細胞ライブイメージング実験系の確立を目指した。まず、基質を随時添加することで蛍光ラベルの減衰を大幅に防ぐことが可能なSNAP及びCLIPタグを付加したDNA修復関連タンパク質の発現ベクターを作成した。DNA二本鎖切断(DSB)修復に関与するタンパク質として53BP1、XLF、XRCC4、Ku80を、また塩基除去修復(BER)に関与するタンパク質としてXCRCC1、OGG1を選択した。各タンパク質のcDNAを取得後SNAP若しくはCLIPタグを付加した発現ベクターを作成し、U2OS細胞に導入してスクリーニングを行った結果、それぞれのDNA修復タンパク質の安定発現細胞株を樹立することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長時間のタイムラプスでは、タンパク質の蛍光ラベルが減衰することが問題となるため、本年度では、長時間細胞ライブイメージング実験系の確立を目指した。当初、mCherry標識53BP1を用いてライブイメージングの条件検討を試みたが、長時間のレーザー露光による退色を防ぐことは困難であった。そこで、蛍光基質を必要に応じて随時添加することで蛍光ラベルの減衰という問題を大幅に改善したSNAP及びCLIPタグに注目した。DNA二本鎖切断(DSB)修復に関与するタンパク質として53BP1、XLF、XRCC4、Ku80を選択した。また塩基除去修復(BER)に関与するタンパク質としてXCRCC1、OGG1を選択した。各タンパク質のcDNAを取得後SNAP若しくはCLIPタグを付加した発現ベクターを作成し、高効率の培養細胞遺伝子導入システムNeon Transfection SystemによってU2OS細胞に導入した。スクリーニングを行った結果、それぞれのDNA修復タンパク質の安定発現細胞株を樹立することができた。 以上の結果から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に樹立した細胞株を用い、ライブイメージングを用いた細胞運命検出系を確立する。放射線照射を受けたG2細胞はG2/Mチェックポイント機構により一時的に細胞周期が停止する。その為G2/M停止後はM期細胞が一時的に細胞集団から消失する。DNA修復が進み、細胞周期が再開されるとM期細胞が検出される。また一方、チェックポイント異常によってG2/M停止が行われなかった場合、細胞集団においてM期細胞が検出される。本実験では位相差画像を画像解析ソフトにより識別可能にすることで、M期への移行時点を自動検出するシステムを構築する。また、ライブイメージング用の老化及びアポトーシス検出キットを用い、OMXが有する3つのレーザーを組み合わせることでDNA損傷を受けた細胞の老化及びアポトーシスシグナルの同時検出を試みる。放射線照射後、老化及びアポトーシスが陰性で、3回以上の分裂を行った細胞を生存細胞とする。 次に、確立した細胞運命検出系を用いて、放射線単独処理で生存していた細胞が、DNA修復または細胞周期チェックポイントの阻害によりどのような経路を経て細胞死へと向かうかを検討する。DNA修復阻害にはDNA-PKの阻害剤(NU7441)を用いる。またチェックポイント阻害には、ATM阻害剤(KU55933)又はChk1阻害剤(UCN-01)を用いる。これらの実験により、放射線照射後の細胞死までの運命決定経路が明らかになり、DNA修復又は細胞周期チェックポイント阻害時に増感された場合の細胞運命経路も解明される。
|
Causes of Carryover |
申請者は計画遂行のため、培養細胞への遺伝子導入が均一且つ効率が高いエレクトロポレーション装置Neon Transfection System (life technologies)を購入する予定であったが、群馬大学に共同利用機器として導入されることが決定したため、本体を購入する必要が無くなった。一方でNeon Transfection Systemに用いる消耗品は非常に高価であるため、次年度の研究目的に合わせて随時消耗品の購入を予定している。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の検討結果より、長時間ライブセルイメージングにはこれまでの蛍光タンパク質によるラベルを用いることは困難であることが明らかになったため、非退色性蛍光基質を添加することで蛍光シグナルを検出することが出来るSNAPタグ及びCLIPタグに切り替えた。これにより技術上の問題は解決したが、高価な蛍光基質を継続的に購入する必要が生じたため、昨年度未使用額をSNAP、CLIPタグの蛍光基質の購入に用いる。
|
Research Products
(4 results)
-
[Journal Article] Visualization of complex DNA double-strand breaks in a tumor treated with carbon ion radiotherapy2016
Author(s)
Takahiro Oike, Atsuko Niimi, Noriyuki Okonogi, Kazutoshi Murata, Akihiko Matsumura, Shin-Ei Noda, Daijiro Kobayashi, Mototaro Iwanaga, Keisuke Tsuchida, Tatsuaki Kanai, Tatsuya Ohno, Atsushi Shibata, Takashi Nakano
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-
-
-