2016 Fiscal Year Research-status Report
1細胞イメージングを使った放射線照射細胞の運命決定の解析
Project/Area Number |
15K15447
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
新美 敦子 群馬大学, 未来先端研究機構, 助教 (50508984)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医学放射線生物学 / 染色体異常 / ゲノム不安定性 / 重粒子線 / 3Dライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
高線量放射線照射によって細胞はそのほとんどが死滅するが、ごくわずかな細胞は生存し増殖を開始する。放射線照射によりDNA損傷を受けた細胞では、損傷のタイプや程度に合わせて最適な修復及び細胞チェックポイント経路を選択し、生存または細胞死へ向かう。本研究では申請者が所属する群馬大学が新たに導入した次世代超高解像度顕微鏡Deltavision OMXによる一細胞レベルでの3Dライブイメージング技術を用いることで、放射線照射を受けた細胞集団の中で、どのような細胞が、どのような経路を経て生存への道を辿ったかをDNA修復とチェックポイントの連携を合わせ追跡し、生存細胞の細胞運命決定までの経路を同定することを最終目標とする。 長時間のタイムラプスでは、タンパク質の蛍光ラベルが減衰することが問題となる。そこで基質を随時添加することで蛍光ラベルの減衰を大幅に防ぐことが可能なSNAP及びCLIPタグを付加したDNA修復関連タンパク質の発現ベクターを作成し、U2OS細胞に導入してそれぞれの安定発現細胞株を樹立した。SNAP-53BP1発現細胞とSNAP-Ku80発現細胞を用い、放射線またはレーザー照射によるDNA損傷誘発後のタイムラプス観察を行ったところ、DNA二本鎖切断(DSB)部位にこれらの修復タンパク質が蓄積されることが確認された。また、細胞運命決定の経路を同定するためには放射線照射を受けた生細胞の細胞周期を検出する必要があるため、Geminin発現ベクターをSNAP-53BP1細胞に更に導入した。スクリーニングの結果、DNA損傷シグナルと細胞周期の判別を同時にモニタリングできる細胞株を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主要テーマであるタイムラプス実験では、蛍光シグナルの減衰が問題となる。当初、様々な条件検討を試みたところ、従来の蛍光タンパク法ラベル法では長時間の観察は困難なことが明らかとなった。そこで非退色性蛍光基質を添加することで蛍光シグナルを強固に維持するSNAP及びCLIPタグに切り替えた。これによりSNAPタグ融合タンパク質発現細胞を構築しなおす必要が生じ、研究遂行に想定以上の時間を要した。新たに構築したSNAP-53BP1及びSNAP-Ku80安定発現細胞を用い、タイムラプス観察を行ったところ、放射線照射やレーザー照射により生じたDSB部位の長時間モニタリングが可能であることが明らかとなった。 放射線照射を受けたG2細胞で適切なG2/Mチェックポイントの活性化が起こっているか観察するためには、放射線照射時に細胞周期がG2期である細胞を選択する必要がある。そこで細胞周期モニタリングのため、mCherry-Geminin発現ベクターをSNAP-53BP1発現細胞に導入してスクリーニングを行い、ライブセルイメージングにおいてもDNA損傷と細胞周期を同時に検出できる細胞株を作成した。 以上の結果から当該年度では、当初安定細胞株の樹立に想定以上の時間を要したが、その後はおおむね順調に進展していると考えられる。よって、本研究課題の現在までの進捗状況は、総合的にはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線照射を受けたG2細胞はG2/Mチェックポイント機構により一時的に細胞周期が停止する。その為、G2/M停止後はM期細胞が一時的に細胞集団から消失する。DNA修復が進み、細胞周期が再開されるとM期細胞が検出される。一方で、チェックポイント異常によってG2/M停止が行われなかった場合、細胞集団においてM期細胞が検出される。本年度では、既に樹立したSNAP-53BP1/mCherry-Geminin発現細胞株を用い、ライブセルイメージングを用いてDNA修復とM期への移行を同時検出することで生存細胞の運命経路選択機構を解析する。また、ライブイメージング用の老化及びアポトーシス検出キットを用い、OMXが有する3つのレーザーを組み合わせることでDNA損傷を受けた細胞の老化及びアポトーシスシグナルの同時検出を試みる。放射線照射後、老化及びアポトーシスが陰性で、3回以上の分裂を行った細胞を生存細胞とする。 次に、確立した細胞運命検出系を用いて、放射線単独処理で生存していた細胞が、DNA修復または細胞周期チェックポイントの阻害によりどのような経路を経て細胞死に向かうかを検討する。DNA修復阻害にはDNA-PK阻害剤(NU7441)を用いる。またチェックポイント阻害には、ATM阻害剤(KU55933)またはChk1阻害剤(UCN-01)を用いる。これらの実験により、放射線照射後の細胞死までの運命決定経路が明らかになり、DNA修復又は細胞周期チェックポイント阻害時に増感された場合の細胞運命経路も解明される。
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Causes of Carryover |
申請者は計画遂行のため、DNA損傷シグナルと細胞周期の判別を同時にモニタリングできる細胞株の樹立を試みた。しかし、損傷シグナルを検出するSNAP-53BP1と細胞周期判別のためのmCherry-Gemininという2種類のタンパク質が、どちらも長時間タイムラプスに使用可能なほど発現量が高く、且つ細胞の生存に影響が見られないバランスのとれた細胞株を取得することは困難であり、適切な細胞株の選択に想定以上に時間を要した。そのため、当該年度では条件検討を目的とした小容量での実験を主に行った。その結果、実際の実験を行う際に必要となるライブセルイメージング用の大容量且つ高価な消耗品の購入額が抑えられることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に樹立した、SNAP-53BP1/mCherry-Geminin細胞株を今後継続的に用いる必要があるため、未使用額は主に高価なSNAPタグ用蛍光基質の購入に用いる。また、長時間ライブセルイメージングにより細胞運命を検出するために必須な、ライブイメージング用の老化及びアポトーシス検出キットも購入する。その他、タイムラプス実験用消耗品の購入や、研究目的に応じての各種DNA修復、細胞周期阻害剤の購入を行う。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] BRCA1 Directs the Repair Pathway to Homologous Recombination by Promoting 53BP1 Dephosphorylation2017
Author(s)
Mayu Isono, Atsuko Niimi, Takahiro Oike, Yoshihiko Hagiwara, Hiro Sato, Ryota Sekine, Yukari Yoshida, Shin-Ya Isobe, Chikashi Obuse, Ryotaro Nishi, Elena Petricci, Shinichiro Nakada, Takashi Nakano, Atsushi Shibata
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 18
Pages: 520-532
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Regulation of pairing between broken DNA-containing chromatin regions by Ku80, DNA-PKcs, ATM, and 53BP12017
Author(s)
Motohiro Yamauchi, Atsushi Shibata, Keiji Suzuki, Masatoshi Suzuki, Atsuko Niimi, Hisayoshi Kondo, Miwa Miura, Miyako Hirakawa, Keiko Tsujita, Shunichi Yamashita, Naoki Matsuda
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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