2015 Fiscal Year Research-status Report
覚醒下小動物PETを用いた統合的脳機能研究システムの開発
Project/Area Number |
15K15465
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岡内 隆 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, リサーチアソシエイト (80415405)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 脳内報酬系 / 脳内自己刺激 / FDG / PET |
Outline of Annual Research Achievements |
近年小動物においても高感度・高分解能によるPET撮像を行うことが可能となり、ラット・マウスなどを用いた神経伝達機能や脳機能を対象としたイメージング研究が多くなされるようになった。そこで我々は脳機能としての「脳内報酬系」に着目し、その典型的な実験パラダイムである脳内自己刺激(intracranial self-stimulation; ICSS)をラットに遂行させ、同時にPET撮像することによって脳内報酬系の神経回路または神経伝達機能の変容を明らかにする試みを始めた。 平成27年度においては、まずは「通常のオペラントボックスにおける脳内自己刺激行動(ICSS)の習得」に向けて、ICSSの課題遂行が常時可能となるよう条件整備に重点を置いた。研究を開始した当初は、刺激電極装着手術の失敗、装着後まもない時期での電極脱落、電極刺入位置のズレによる刺激に対する動物の無応答などが発生し、ICSS習得に至らないケースが多く見られたが、手術および条件付け等の手技向上により刺激電極を刺入したラットのほぼすべてにおいて堅調なICSS習得が可能となり、端緒となる課題は達成できたと考える。これに引き続き、「オペラント-PET に向けた実験環境の整備」の課題を進めている。あらかじめ18F-FDGをラットに投与した直後にオペラントボックス内でICSSを実行させ、その後にそのラットを麻酔してPET撮像を行う。この麻酔下FDG-PETによる機能画像取得法は動物を用いた様々な脳機能研究に応用されており、本研究においても今後ICSS習得により賦活される脳内賦活部位(糖代謝昂進部位)の同定に取り組む。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では平成27年度においてはICSS遂行時のPET撮像まで予定していたが、実績の概要で述べたようにICSS習得の条件整備に比較的多くの時間を要した。また本研究ではPET装置の近傍にオペラントボックスを別途設置する必要があり、その整備に若干の遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
「オペラント-PET に向けた実験環境の整備」を着実に進めていく。オペラントボックスが特殊な装置であるため一部部品の調達に時間がかかっているが状況が改善されしだいICSS習得動物を用いたFDG-PET実施に向けた環境整備を完了しPET撮像を開始する。具体的には、ICSSを習得し至適刺激強度の定まった群に18F-FDG尾静注後一定時間ICSSを遂行させた場合と、術後十分に回復しているが条件づけ未経験の群を同じ時間オペラントボックス内で自由行動させた場合の脳内FDG集積を比較する。各々の画像データはラット用脳テンプレートに標準化した後SPMにより統計解析し、脳内報酬系に関わる神経ネットワークを明らかにする。このプロトコルが達成され十分なデータが蓄積されれば、さらにICSS習得プロセスに関わるドパミン系神経伝達の神経回路同定への試みにつなげていく。
|
Causes of Carryover |
27年度においては既設設備を使用した条件検討にほとんどの時間を費やしたため、オペラント-PETに向けた実験環境整備に着手しなかった。このため環境整備に予定していた助成金を使用することがなく次年度への繰り越しとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度助成金を使用してオペラント-PETに向けた実験環境整備を行う。これにより行動課題を遂行させながらPET撮像を実施することが可能となる。
|