2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K15487
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中野 徹 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50451571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 尚 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10436115)
大内 憲明 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90203710)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁気 / 磁界 / 食道 / 反回神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
胸腔鏡下食道切除術は近年普及する一方、操作に高い技量を要し、特に反回神経麻痺の発現頻度は標準的開胸手術に比較して多いといわれている(井上、他 手術、1998)。腹臥位の食道切除術も導入され、中下縦隔の術野展開がきわめて良好となり、呼吸器合併症が少ないことが報告されているが、反回神経麻痺の頻度は減少しておらず(Lin J,et.al.Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2013, Kaburagi,et.al.World J Surg. 2014)むしろ左反回神経周囲のリンパ節郭清手技の難易度は高くなっている。反回神経麻痺は嗄声あるいは呼吸困難のみならず、誤嚥や肺炎の原因となるため食道癌手術の大きな課題である。術中の非侵襲的神経探索と神経機能モニタリングにより声帯機能温存を可能とする新しいデバイスの登場が本手術の課題を解決しうると考える。非侵襲的な術中反回神経探索法と声帯機能モニター下手術の確立は最大限のリンパ節郭清と声帯機能温存の為に多いに期待される。磁気による神経刺激法は従来の電気パルスと異なり神経を露出することなく刺激が可能であるため神経の走行の探査を可能とする。本研究では胸腔鏡に導入可能な磁気神経刺激装置を作製し、工学実験で磁気コイルの形状を含めた磁気パルス神経刺激の最適化を行い、動物実験により反回神経走行を非侵襲的に探査することで声帯機能温存を可能とする手術器の開発を目指す。本年度は磁気による反回神経刺激の至適な条件を探索するため、磁気刺激を電気刺激に置き換え、末梢神経をパルス刺激した際に生じる神経活動電位の計測と声帯のリアルタイムモニターをブタとラットをもちいて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目的は磁気による反回神経の刺激を行うことであるが、内視鏡外科用コイルを開発し的確に刺激を行うためには陽性コントロールが必要となる。本年度は電気刺激ではあるが全身麻酔下ブタを用いて頸部迷走神経を刺激した。これにより反応する声帯の動きを内視鏡下に確認しできたため、今後施行予定である反回神経磁気刺激の際の声帯の機能を評価する実験系を確立することができた。電気パルス刺激と特徴的刺激に対応する声帯の運動をパルスとして検知することができた。これにより磁気に置き換えた刺激系を作製するための必要条件となりうる。今年度の実験で声帯の運動を筋電系を用いて検知することが可能となっている。研究過程で将来的に刺激した神経の活動電位を直接測定することが望ましいので、日本光電製の神経刺激装置とオシロスコープを用いて条件設定を試みた。磁気に置き換える前の電気刺激と比較するための実験系の確立を行った。この実験により電気刺激時のパルス電流が刺激装置から非特異的組織に漏電することが明らかになった。漏電により生じる組織における電位を相殺することで神経の活動電位を測定することが可能となった。以上の理由で研究の進捗は概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に行った実験により、反回神経と頸部迷走神経を刺激するためのおおまかなパルス条件が明らかとなった。このため刺激に必要な磁場と供給するエネルギーの大きさが推測でき、磁気発生装置のための電源の仕様を決めることが可能となる。また、必要な磁場を発生させるためのコイル設計がデザイン可能となったと考える。装置の小型化と細径化。経1mm程度の抹消神経に対応できる磁場作成を可能とする為磁気シミュレーションを行い作成する。先行研究を参考にし、パルス頻度20Hz前後、0.1テスラ前後で出力調節可能なコイルを作成する。コイルのサイズを含む形状とそれに通電するパルス電流、パルス頻度による磁束密度を計測し、内視鏡外科用コイルの磁性工学的特性を明らかにする。①内視鏡外科用コイルを長さ30cm、経10mmの筒状構造物(対壁通過用トラカールに対応可能)に装着する先端のカバーを含めて材料工学的に検討。カバーはポリスチレン、ポリプロピレン等を考慮。筒状構造については当初ステンレスを使用するが場合によってはエルゴノミクスを検討しフレキシブルな素材も考慮する。②コイルの神経刺激作用について、実験効率を高めるためラット坐骨神経(経1mm)と活動電位測定装置(生体システム生理学分野)を用いて神経伝達速度を測定する(図4)。得られたデータは装置の条件にフィードバックする。以上を来年度以降の推進方策としたい。
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