2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K15629
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大野 京子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30262174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相原 一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80222462)
吉田 武史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (30451941)
諸星 計 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60598415)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 眼発生・再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ラット眼において、強膜に沿って移植したヒト線維芽細胞が視神経周囲に沿って生着し、その結果コラーゲンをin situで産生しているかどうかを研究した。Wistarラット(オス;生後6週)を使用し、免疫抑制剤としてFK506 1mg/kgを筋注した(移植前3日間、移植後5日/週)。移植細胞は、mAG-1を遺伝子導入したヒト線維芽細胞を培養後、細胞懸濁液(PBS希釈)を1万細胞個/μlになるように調整した。ラットは、ペントバルビタール腹腔内麻酔(40mg/kg)を施行後に、オキシブプロカイン点眼麻酔下に線維芽細胞を後部強膜に沿って30ゲージの鈍針で1万個を注入した。1週間後に灌流固定(ヘパリン加PBS(5U/ml)で左心室より還流、右心耳より脱血;2%パラホルムアルデヒドにて還流)を行って眼球を摘出し、2%PFAで後固定を行い、凍結切片を10 μmで作成し、移植細胞の生着と部位を共焦点顕微鏡で観察した。前年度の実験により、上記方法にて高率の移植細胞の生存が確認された。 ヒト由来移植細胞が産生したコラーゲンと、ラット自体のコラーゲンを区別できる、ヒト特異的コラーゲン抗体を用いて、移植後2週間、4週間で免疫染色を施行した。その結果、移植細胞は約1週間で消失するものの、強膜に沿って産生されたヒト由来コラーゲンが確認された。さらに、移植細胞が消失後も産生されたコラーゲンはその部位にとどまり既存のレシピエントの眼組織と一体化している所見が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
手技の改良により、結膜を切開せずに上眼瞼の皮膚を介して眼科壁とテノン嚢の間を通じ、視神経方向に細胞懸濁液を注入することにより、視神経周囲硬膜の部位まで線維芽細胞を注入でき、しかも1週間後の時点で移植された細胞が生着していることが確認されるようになった。また、ヒト由来コラーゲンとラット由来コラーゲンを区別する免疫染色も特異度が高く染色され、その結果、レシピエント自体のコラーゲンではなく、移植された細胞由来のコラーゲンが産生され、眼組織を支えている様子を明瞭に観察することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の進行状況を踏まえ、平成29年度以降には、移植された線維芽細胞が産生したコラーゲンが、強膜篩状板方向を肥厚化し、構造的に補強しているかを確認する。線維芽細胞を視神経周囲に注入し、2週間後、4週間後の時点でヒトコラーゲンに特異的な抗体を用い、移植細胞によるコラーゲン産生の有無とその方向性を観察する。同時に電子顕微鏡を用いて産生コラーゲンの細線維の観察とヒトコラーゲン抗体を用いた免疫電顕を行う。さらに凍結切片において、強膜篩状板の厚さを測定し、細胞移植のコラーゲン産生により篩状板の肥厚が得られたか調べる。最後に、シュレム管にビーズを詰まらせて眼圧上昇を再現する緑内障動物モデルを用い、同様の手技でヒト線維芽細胞を注入し、移植細胞によるコラーゲン産生、篩状板の肥厚化を調べる。注入手技に熟練した本学の研究者および緑内障モデルの実験に習熟した研究者の連携により本研究の遂行は十分可能であると考えられる。
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Causes of Carryover |
強膜にそって線維芽細胞の注入を行った際に、注入細胞が脳内および脳脊髄液に混入し、血 流塞栓を生じたと考えられるラットの死亡が予想以上に多く発生する問題点が生じた。そこで、細胞を視神経からやや離して注入するなどの手技の改良を試み、トライアンドエラーののちに結膜ではなく上眼瞼皮膚を通じて注入することにより、直後の死亡は回避できることが追加実験で判明した。また、ヒトに特異的にコラーゲンを染色する抗体の特異性の確認に、予想以上の時間を要したこと、上記の手技の改善に当初の計画以上の時間がかかったこと、今後の解析にはさらに匹数が必要であること、視神経から離れた部位に注入された細胞が十分に視神経に遊走するかなど、手技の変更に伴い新たに検討すべき実験が必要になったために延長を必要とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の細胞注入手技の改良に伴い、さらに上記手法の安全性、有効性を追加購入したラットで検討する必要がある。そのため、新規に実験用のラットを購入するとともに、動物飼育に関する経費にあてる必要がある。また、直後の死亡が回避できることを確認したうえで、長期的な移植細胞の生着とin situでのコラーゲン産生を明らかにするために、さらなる動物の購入および凍結切片作成およびヒトコラーゲンの免疫染色にかかる経費が必要である。上記を確認したうえで、さらに本方法の緑内障性視神経障害に対する有効性を解明するためにシュレム管にビーズを閉塞した高眼圧緑内障モデルを用いる。このモデル動物の飼育、管理にかかる経費も必要である。
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Research Products
(16 results)