2015 Fiscal Year Research-status Report
経口投与用リポソーム薬物キャリアのステルス機能向上のための研究
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15K15739
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮脇 卓也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00219825)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯学 / 薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロロホルムとメタノール混合溶媒中に、脂質(ホスファチジルコリン、コレステロール、ジパミルトイルホスファチジン酸)とミダゾラムを混和し、ポリエチレングリコール(以下、PEG)を9%モル比になるよう加えて、ロータリーエパポレーターを用いて薄膜形成し、ボルテクスイング法によってPEG化ミダゾラム封入リポソームを作製した。作製されたPEG化ミダゾラム封入リポソームを超音波破砕装置を用いて細粒化(超音波処理)した。超音波処理での環境温度、処理時間、および出力を変化させ、動的光散乱システムを用いてリポソームの粒子径の分布を評価した。さらに、ゲル濾過処理で細粒化リポソームを抽出し、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて、ミダゾラム濃度を測定し、ミダゾラムのリポソームへの封入率を評価した。 その結果、室温下でPEG化ミダゾラム封入リポソームを超音波処理すると、処置時間とともにリポソームの凝集が起こり、粒子径が大きくなる傾向があることがわかった。一方、超音波装置の浴槽内の水温を10℃程度の低温にコントロールすることで凝集が回避できることが判明した。超音波処理の条件として、200Wで20KHzの下で、20分以上超音波処理することで、目標とする100nm程度の粒子径に保たれることがわかった。さらに、この条件下でのミダゾラムの封入率の低下はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、静脈内投与用の鎮静薬であるミダゾラムを経口投与できるように当教室で開発したミダゾラム封入リポソームを、ナノレベルまで細粒化する際の、細粒化の方法(超音波処理の条件)の違いが細粒化後のリポソームの粒子径およびミダゾラムの封入率に及ぼす影響を調べること、PEG化の際のPEG濃度の違いが細粒化および封入率に及ぼす影響を調べること、細粒化およびPEG化がミダゾラムのステルス効果およびバイオアベイラビリティに及ぼす影響を調べることを目的として計画された。平成27年度の研究成果によって、細粒化の方法(超音波処理の条件)によって細粒化および封入率に影響があることがわかり、適切な条件を見い出すことができた。さらに、PEG濃度の違いについては、より高い濃度でステルス効果が期待できるため、当該年度では高濃度(9%モル比)で作製し、粒子径および封入率で良好な結果を得ていることから、全体として、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ミダゾラム封入リポソームを細粒化することによる効果および機序に焦点をあてて研究を進める。平成27年度の研究で得られた条件で作製した細粒化ミダゾラム封入リポソーム溶液(ミダゾラム量2mg/kg)を、ウサギに経口役与し、リポソームに封入されていないミダゾラム溶液、細粒化していないミダゾラム封入リポソーム溶液の投与後の血中ミダゾラム濃度と比較することで、細粒化することによるステルス効果およびバイオアベイラビリティへの効果について評価する。細粒化することによってミダゾラム封入リポソームのステルス効果およびバイオアベイラビリティが高くなることが証明されたら、次に、細粒化ミダゾラム封入リポソームと細粒化していないミダゾラム封入リポソームの脂質の量を同量に調整してウサギに投与し、小腸からの脂質吸収に関与しているアポリポ蛋白-48(apo B-48)の血中濃度を測定し比較することで、細粒化することによって消化管からの吸収が高められているかどうかを証明する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定どおりに研究は遂行され、予定どおりに経費を使用したが、わずかな残額(62円)が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越された金額(62円)は、予定された平成28年度の使用金額と合わせて使用し、当初予定された研究計画を遂行する。
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