2015 Fiscal Year Research-status Report
看護師のための夜勤時多重課題対策指針の開発-夜間の患者安全と生活の質保証に向けて
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15K15823
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
亀岡 智美 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (50323415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮首 由美子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 講師 (30736955)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 夜勤 / 看護師 / 多重課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、看護師が講じている夜勤時多重課題対策の解明、及び、その成果に基づく「看護師のための夜勤時多重課題対策指針」の開発である。この目的達成に向け、平成27年度は、まず、国内外の文献を検討し、看護師個々が実際に夜勤時多重課題対策を講じているものの、その全容が未解明であることを確認した。次に、看護師が講じている夜勤時多重課題対策の全容解明に向け、交代制勤務経験3年以上の看護師を対象とする質問紙調査を行った。測定用具には夜勤時多重課題対策を問う自由回答式質問を含む質問紙を作成して用いた。全国の病院65施設の看護師1055名に質問紙を配布し、回答と返送を依頼した。分析には、統計学的手法、及び、Berelson,B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いた。 看護師624名 (回収率59.1%)より質問紙の返送があり、有効回答602名分を分析した。対象者は、臨床経験年数が平均15.9年であり、三交代制勤務と二交代制勤務の者を含んだ。その回答は、看護師が、夜勤時の患者の個別ニードへの対応改善を課題としていることを示した。夜勤時多重課題対策を回答した339名の記述を分析した結果、【始業時刻前からの出勤や休憩時間短縮により正規の勤務時間以外の時間を夜勤業務遂行に当てる】、【夜勤中の業務の進め方や行動計画を事前に決定しておく】、【夜勤中に生じる可能性のある問題や予定外業務を予測し、未然防止、早期発見、円滑な対応に必要な対策を講じる】等の39カテゴリが形成された。また、考察を通し、看護師の夜勤時多重課題対策が、「夜勤者として担うべき業務や看護実践に対する最善の遂行計画を立案する」等、9項目の実現につながるという特徴を持つという示唆を得た。このような成果は、夜間の看護実践充実に向け、看護師個々が夜勤時多重課題対策を講じる際の基礎資料として活用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、平成27年度の目標を「調査を通した看護師が夜勤帯の多重課題遂行に向けて講じている対策の質的解明」、平成28年度の目標を「平成27年度の結果に基づく看護師が講じている夜勤時多重課題対策の特徴考察、及び、それに基づく『看護師のための夜勤時多重課題対策指針』の成文化、開発」としていた。しかし、研究を順調に進めることができ、平成27年度に、平成28年度の目標の一部「看護師が講じている夜勤時多重課題対策の特徴考察」まで達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
看護師が講じている夜勤時多重課題対策の解明、及び、その成果に基づく「看護師のための夜勤時多重課題対策指針」の開発という最終目的の達成に向け、平成28年度は、次の3点の活動を計画している。第1は、平成27年度の成果を基盤にさらなる分析を行い、「看護師は、夜勤時多重課題対策として夜勤中に何を行っているのか、夜勤中以外の時に何を行っているのか」を解明することである。第2は、第1の成果を含む一連の成果に基づき、「看護師のための夜勤時多重課題対策指針」を成文化するとともに、看護師による効果的な夜勤時多重課題対策の実施に向けた教育について検討することである。第3は、平成27年度までの研究成果の公表であり、具体的には、「夜勤時の看護活動の実態」、及び、「看護師が講じている夜勤時多重課題対策」の2つの成果を2つの看護系学術集会において発表すること、また、それらを論文にまとめ専門誌に投稿、公表することを予定している。 平成29年度は、平成28年度までの研究成果を看護系学術集会や専門誌に公表する一方、全国の病院の院内教育担当者対象の研修会において、27年度の研究成果「看護師が講じている夜勤時多重課題対策」、28年度の研究成果「看護師のための夜勤時多重課題対策指針」を紹介し、研修会参加者による各病院の院内教育を通した看護師個々への成果の普及と活用を促進する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、データ収集、分析が比較的順調に進み、研究補助者の雇用時間を短縮でき、それに伴う支出を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、当初予定していなかった活動として、「平成27年度の成果を基盤にさらなる分析を行い、「看護師は、夜勤時多重課題対策として夜勤中に何を行っているのか、夜勤中以外の時に何を行っているのか」を解明すること」を計画している。この分析を行うためには、大量の質的データや分析結果の整理に必要な研究補助者の雇用、及び、分析作業に必要な事務用品の購入が必要となる。また、当初、平成28年度の研究成果の発表は、1学会における発表を予定していた。しかし、平成27年度の活動を通し豊かな成果が得られたため、2学会において2種類の成果を発表するように計画を変更した。そのため、2学会に参加し、発表するための費用が必要となる。研究費は、これらに使用する計画である。
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