2015 Fiscal Year Research-status Report
精神科デイケアにおける長期利用者の地域移行のためのプログラム開発に関する研究
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15K15932
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
田中 敦子 日本福祉大学, 看護実践研究センター, 客員研究所員 (70398527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長江 美代子 日本福祉大学, 看護学部, 教授 (40418869)
服部 希恵 日本福祉大学, 看護実践研究センター, 客員研究所員 (00310623)
寺澤 法弘 日本福祉大学, 社会福祉学部, 助教 (80548636)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 精神科デイケア / 精神障害者の地域移行 / ストレングスモデル / リカバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、精神科デイケアの長期利用の要因を明らかにし、積極的に精神障害者の地域移行・定着を橋渡しできる支援プログラムを作成・実施・評価することを目的としている。 平成27年度は、精神科デイケアの長期利用の要因を明らかにするための調査票を作成することを目的に、国内外の文献レビューを実施した。海外においては、リカバリー志向の実践評価の重要性が認識されている。ストレングスモデルは、病気や欠陥といった「問題」ではなく人間の「可能性や強み」に焦点をあてたリカバリー志向による実践方法である。ノーマライゼーションや社会統合という概念に基づき、仕事の機会や娯楽の機会、家族との関わりや地域社会への参入のために援助付き雇用や援助付き住居、利用者自身による計画、セルフヘルプといった「可能性の開かれた生活の場」を創造する試みがなされている。一方、「可能性の閉ざされた生活の場」とは、スティグマやレッテルの存在する中で貧困や失業といった状況を生み出している。施設化、精神科入院、保護的就労、グループホーム、部分入院/デイプログラムなどの精神障害者の欠陥や病理、問題点を補うことを基本とした援助の多くは、社会との隔離を強めている。つまり、精神科デイケアは、「可能性の閉ざされた生活の場」となりやすい状況があり、精神科デイケア利用者の地域移行のためには、いかにして「可能性の開かれた生活の場」へと転換していくかが重要である。文献レビューの結果、本研究では、ストレングスモデルに基づき、精神科デイケアのリカバリー志向の実践の程度を支援者、利用者双方から調査することにより、精神科デイケアの長期利用の要因を明らかにすることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
精神科デイケアのリカバリー志向の実践の程度を調査するための尺度の検討に時間を要している。海外では、リカバリー志向の実践評価がなされているが、日本においては、そうした例が少ない。支援者のリカバリー志向に基づく実践を当事者側、支援者側がそれぞれ評価する尺度について、Recovery self assessmentという36項目で構成された尺度が本研究に適していると考えられた。しかし、内的一貫性、再検査信頼性、収束的妥当性、弁別的妥当性の検討が支援者版でのみ実施されている状況であった。また、12項目の短縮版は、内的一貫性は良好であるが、RASCH分析においては不十分であり、36項目の原版の使用を勧められている。日本語に訳された32項目の改訂版については、訳者に問い合わせたところ、これについても信頼性、妥当性が不明であった。尺度の検討、問い合わせ等に時間を要した結果、研究の進展がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
精神科デイケアのリカバリー志向の実践の程度を調査するために、Recovery self assessmentの36項目版の日本語版を作成する。精神科デイケアに専従する専門職者および精神科デイケア利用者に対して日本語版Recovery self assessment、関連する尺度を用いて調査して信頼性、妥当性の検討を行う。日本においては、リカバリー概念が広く浸透していないことが予測されるため、リカバリーに対する認識についても調査を行う。リカバリーの認識、リカバリー志向の実践の程度と精神科デイケアの長期利用の要因について明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、調査対象者に調査を行うため、調査の説明のための旅費、調査に協力の得られた対象者への謝礼として予算を立てていた。調査票の検討に時間を要したため、次年度に調査票を用いて調査を行うこととなった。したがって、次年度にその予算を請求することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.Recovery Self Assessment の日本語版の作成と信頼性、妥当性の検討のために調査票を用いて調査を実施する。精神科デイケア施設へ調査の説明を行うための旅費、調査協力の得られた対象者への謝礼が必要である。なお、調査対象者の数については、使用する調査票の項目数等によって検討する予定である。 2.信頼性、妥当性の検討のために、Recovery Self Assessment尺度に関連する尺度を用いる。使用料のかかる尺度(QOL尺度等)を用いることを想定している。また、大量の調査票を準備し、得られたデータを統計的に分析することとなるため、プリンター、統計分析ソフトの購入を予定している。
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