2016 Fiscal Year Research-status Report
放射性セシウムの初期沈着直後の土壌深度分布の決定因子と浸透・拡散プロセスの解明
Project/Area Number |
15K16112
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 純子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30714844)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 初期深度分布 / スクレーパープレート |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原発事故後の2011年6月から実施しているこれまでのモニタリング結果から、沈着直後の土壌中の放射性セシウムの初期深度分布は土壌の粗孔隙率と関係があり、雨水が速やかに浸透できる土壌ほど、放射性セシウムも下方まで浸透している傾向が示唆された。しかしながら、これは8地点のみでの結果であり、一般化のためにはさらなる調査が必要である。そこで、本研究では、日本原子力開発機構(JAEA)主導で実施されている全85地点の広域的な深度分布モニタリング調査地のうち、除染等の明確な人為的撹乱が認められない60地点において土壌サンプリングを実施し、土壌の物理性(三相分布、孔隙率、飽和透水係数)および化学性(pH、全炭素量、全窒素量、CEC、RIP)の分析を行なった。 JAEAが公開しているデータベースより、放射性セシウム存在量の初期深度分布を解析し、その緩衝深度H0および移動距離(Half depth)を算出した。これと、土壌の物理性との関係を調べたところ、移動距離と粗孔隙および飽和透水係数の間に弱い正の相関が認められ、放射性セシウムの土壌中の初期分布は、仮説の通り、水の浸透性が影響していることが示唆された。一方、化学性に関しては、その緩衝深度および移動距離との間にいずれも明確な関係は認められなかった。土地利用や土壌分類を考慮したさらなる解析が必要であるが、初期深度分布を決める要因としては、化学的な性質(放射性セシウムの吸着能など)よりも物理的な性質(透水性)が重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放射性セシウムの初期沈着直後の土壌深度分布の決定因子として分析を予定していた土壌の物理性および化学性の分析はほぼ終了した。一方で、微細形態分析に関しては、本年度の土壌のサンプリングができなかったことから、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、不攪乱土壌試料を採取し、土壌微細形態用薄片を作成し、その薄片についてイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーによる放射性セシウムの検出を行う。そして、放射性セシウムが土壌の微細形態上のどこに位置するか判別するため、微細形態とイメージングプレートの画像を重ね合わせた解析を行う。これと、土壌の物理性、化学性、土地利用などを考慮した総合的な解析を進める。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた調査および微細形態用の土壌サンプリングができなかったため、これに使用する予定であった調査旅費および必要な試薬・消耗品分として次年度使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査旅費(1泊2日2万×5回=10万円)および試薬・消耗品(20万円)、分析センター利用料金(8万円)を予定している。
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Research Products
(3 results)