2016 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチン依存的DNA-PK活性化が導く抗がん剤感受性のメカニズム解明
Project/Area Number |
15K16127
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
逆井 良 金沢医科大学, 医学部, 助教 (10549950)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DNA二本鎖切断 / 非相同末端連結 / 相同組換え修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAの二本鎖切断(DSB)は非常に重篤なDNA損傷であり、相同組換え修復(HR)と非相同末端連結(NHEJ)の2つが主要な修復経路として知られている。一方、DNA複製を介して、DNA切断端を1つしか持たないDSB(one-ended DSB)が生じることがある。カンプトテシン(CPT)は、one-ended DSBを引き起こす抗がん剤であり、HR欠損細胞はCPTに対し感受性を示すことから、one-ended DSNの主要な修復経路はHRだと考えられている。これに対し、NHEJ欠損細胞はCPTに抵抗性を示すことが明らかとなり、NHEJが介在することで、不適切な修復がおこり、細胞死を引き起こしていると考えられる。従って、one-ended DSBに対するNHEJ機構の解明は、CPTの奏功する上で重要と考えられる。 これまでに、CPTで引き起こされるone-ended DSBに対する細胞応答として、NHE因子であるDNA-PKの活性化を指標に解析を進め、ユビキチン化因子であるUbcH5とSIAH1を上記応答に特異的に関与する因子として同定した。これらの因子がどのようにしてone-ended DSBに対するDNA-PKの活性化を制御しているのか、そのメカニズムの解明に取り組んでいる。その1つとして、DNA-PK活性化調節因子であるKuタンパク質に着目したが、解析は難航している。一方、UbcH5/SIAH1がDNA損傷応答広範に影響する可能性も見えてきており、解析を進めている。さらに、one-ended DSBに対する修復経路そのものの理解を広げるため、各修復経路とone-ended DSBの修復効率について、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
one-ended DSB応答に関与する因子として、これまでに同定したUbcH5とSIAH1というユビキチン化因子がどのようにして、DNA-PK経路を制御しているか、そのメカニズムの解明に取り組んでいる。これまでの解析から、DNA末端を削り込んでHRへと進ませるDNA end resectionの反応とは独立して、DNA-PKの活性化に関わることを明らかとした。そこで、DNA-PK経路はDNA末端に結合するKuタンパク質によって制御されていることから、上記ユビキチン化因子がKuタンパク質のDNA末端への結合に影響する可能性を考えた。研究協力先である群馬大学の協力を仰ぎ、顕微鏡による解析を試みていたが、想定されるKuの像が得られず、現在は中断している。 上記ユビキチン化因子のone-ended DSB応答への関与を解析すると、両者のダブルノックダウンでDNA損傷応答そのものが抑制されていることを見出した。そこで、DNA損傷に対する初期応答から修復段階であるHRのステップまでを、UbcH5/SIAH1ダブルノックダウン細胞で解析中である。 また別のアプローチとして、現在はone-ended DSBの修復経路そのものの解析を進めている。これまで言われているHRの寄与度、および、DNA-PKによるNHEJ経路の寄与度を評価する上でも、修復経路を改めて検証している。DNA損傷マーカーであるヒストンH2AXのリン酸化を指標に、one-ended DSBの修復効率を解析した結果、HR欠損でも修復はある程度進んでおり、NHEJ欠損はとくに影響は見られなかった。しかし、end resection欠損では、NHEJによる修復が見られるようになり、別の修復経路の因子の関与も見られた。したがって、HR経路以外に働く、主要なone-ended DSB修復経路が存在することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
UbcH5/SIAH1/DNA-PK経路の解析において、Kuの情報は重要であることから、顕微鏡以外の方法でKuの挙動を解析する。1つの方法として、DNA結合画分の分取によるウエスタンブロッティングでの解析を計画しており、RNase処理を加えることで、バックグランウンドを下げ、Kuタンパク質のCPT依存的なDNAへの結合を検出可能になると考えている。 さらに、上記ユビキチン化因子がone-ended DSBに対するNHEJ経路に関与するのであれば、CPTに対し抵抗性になると考えられる。そこで、CPTに対する細胞毒性試験を行う予定である。 また、修復機序の解析から見えてきた別経路の関与についても、複数の因子に対して検証をすすめ、明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本研究において、ユビキチン化因子の関与機構の解析が難航していることが研究全体の進捗にも影響し、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の方向性を広げたことで、研究が進展し始めたので、今後の推進方策に従い速やかに実施していく。課題が克服されれば、データも揃いつつあることから、まとめて公表する。
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Research Products
(4 results)