2017 Fiscal Year Research-status Report
医療系学生の臨床推論能力を高めるムラージュ教材の開発
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15K16249
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
井上 千鹿子 日本医科大学, 医学部, 助教 (90453042)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教材開発 / ムラージュ / シミュレータ / 医学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
医学生・研修医の教育方法の一つとしてシミュレーション教育が行われており、模擬患者(simulated patients: SP)が参加する教育やシミュレーター(医学教育用マネキン)を用いる形式など多くの大学で取り組まれ、その工夫と成果が報告されている。しかし、医療用Moulage(特殊メイクの意、以下、ムラージュ)を用いた実践報告は少ない。ムラージュとは、傷や患部を模造して再現したものを意味し、古くは、蝋で作られた精緻な模型(蝋製皮膚病型模型)を指し、現代では、シリコンやラテックスなどの樹脂やゴムで傷や患部を再現した特殊メイクが総じてムラージュと呼ばれている。 本研究では、患部・病態を再現するムラージュを開発し、学習教材としての活用範囲を明らかにすることを目的としている。これまでムラージュはメイク技術の難易度が高いことや複数のSPに対して同じムラージュを準備することが困難など、簡易化・標準化に課題があった。 平成28年度に実施した転写シールを用いたムラージュの開発により、これまで課題であった簡易化・標準化が改善できた。しかし、シールの特性上、転写シールで作成できるのは平面に限られることが課題であった。これらの課題を解決するため、29年度は立体的なムラージュの開発に取り組んだ。 29年度はこれまでのムラージュ開発を発展させ、転写シールを組み合わせた立体的なムラージュの作成方法を模索した。(1)転写シールそのものを隆起させる方法(エンボス加工した3Dシール)と(2)シリコンやゼラチンなどで立体物の上に転写シールを貼る方法(二層構造方式)の二つの方法のムラージュを開発した。立体なシールが作成できたことで、ムラージュにより再現できる病態の幅が広がったと考えられる。しかし、隆起した形状を作成する際には手作業で作成する部分があり、作成方法の標準化、簡易化については今後検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
29年度に主に1)ムラージュの教材開発、2)教材としての有効性の検証作業、3)研究の総括を計画していた。1)ムラージュの開発に関しては当初の計画より進展したが、2)教材としての有効性の検証作業、3)研究の総括に関してはやや遅れている。1)の教材開発に関しては本研究の中核として考えており、ムラージュの開発に関しては29年度の成果により十分な成果が得られ、進展していると考えられる。2)検証作業は、プレ調査を行った時点で研究代表者の怪我により突発的に継続困難となったため一時中断した。3)研究の総括で本研究のまとめと報告書の作成を行う予定であったが、同様の理由で一時中断せざるを得なくなった。以上のことから、総じて「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、患部・病態を再現するムラージュを開発し、学習教材としての活用範囲を明らかにすることを目的としている。今後の研究の推進方策として、29年度に研究代表者の怪我による中断で実施出来なかった計画も含めて、1)ムラージュによる教材開発、2)教材としての有効性の検証、3)本事業の研究の総括を行う予定である。これらに加え、ムラージュのニーズに関する調査研究を30年度に実施予定である。教材の検証作業については、計画を一部変更し、実施予定である。また、これまでの研究の総括として、ムラージュ教材の報告書作成に関しては予定どおり行う。本研究で得られた成果を学会発表のほか、ワークショップを開催する予定である。
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Causes of Carryover |
29年度に計画していた検証作業や調査研究、これまでの研究の総括とする報告書の作成で使用予定だった経費について、研究代表者の怪我により本事業の一時中断があったため、次年度使用額が生じた。研究代表者は29年11月、右手首(利き手)の捻挫により、靭帯を損傷したため、握力が6まで低下し、日常生活にも支障をきたしており、研究の中断を余儀なくされた。30年4月現在もリハビリを継続中であるが、研究遂行する上では支障が無い程度には回復しており、29年度に計画していた計画を実施予定である。 平成30年度は、ムラージュ教材の開発、ムラージュの教材としての検証作業を予定しており、これらに伴う物品費、旅費、人件費・謝金、その他を当該の研究に使用予定である。また、本研究の成果についての学会発表・ワークショップの開催のほか、本事業の総括としての報告書の作成に使用予定である。
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