2016 Fiscal Year Research-status Report
インタラクティブな被災者生活再建支援のパーソナルファイル化
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15K16299
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
井ノ口 宗成 静岡大学, 情報学部, 講師 (90509944)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 防災 / 危機管理 / 生活再建支援 / インタラクティブモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「1.被災者台帳を用いた被災者生活再建過程の行政管理情報の一元管理」「2.情報共有過程に近距離通信を用いたシステム設計・開発」「3.被災地現場におけるプロトタイプ版の実証検証」にかかる研究を推進した。 1.については、被災者台帳を用いた被災者生活再建支援システムの機能強化を行い、DBの見直しと、DBから情報を集約して抽出するための機能実装を推進した。また、3.とあわせて、平成28年4月に発生した熊本地震では、県下の18市町村において被災者生活再建支援システムを実装し、被災者の確定から、被災者支援にかかる様々な情報を一元的に管理することに成功した。益城町では、被災者個人単位での家屋被害、罹災証明発行記録、避難状況、仮設住宅入居状況、支援金や義援金の支払状況など、各課が進める支援を網羅的に管理することが実現された。また、12月に発生した糸魚川市駅北大火では、同様に仕組みの実装を行うとともに、被災者と向きあって生活再建戦略を策定するにあたり、個人単位での支援状況の一覧表示・印刷機能を設計・開発し、実装した。とくに、住宅被災に限らず、個人事業主の場合、店子としての被災による経済的被害が顕著に表れたことから、それらについてもパーソナルファイルとして管理が実現された。 2.については、避難所の活動を1つの利用局面とし、想定被災者の行動の記録を通し、それを想定被災者へ還元する仕組みを設計・開発した。近距離通信では、スマートホンの利用が必要となるため、災害時要支援者を含めた訓練での実装としたため、スマートホンの利用は困難であったことから、紙媒体にQRコードを実装し、電算化されたシステムと連携させることで、個人行動把握の実現可能性を追求した。この検証の結果、避難所生活フェーズにおける被災者特定・行動管理が出来ることから、災害時のパーソナルファイルの基礎が確定できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年熊本地震および糸魚川市駅北大火において、被災者台帳を用いた被災者生活再建支援システムを、被災地で実装するとともに、各市町村での利用が推進された。また、各自治体との連携により、被災者の生活再建過程を把握する上での情報項目を、実態に基づいて解明できた。特に糸魚川市駅北大火では、個人単位での個票一覧機能を設計・開発・実装したことにより、その効果測定に至る基盤を整備した。 なお、避難所を事例とした被災者行動把握および糸魚川市駅北大火での研究については、メディア等の取材を受けた。 1.井ノ口 宗成・田村 圭子, 「糸魚川大火1カ月。「被災者生活再建支援システム」を活用し、り災証明書申請開始」, リスク対策.com, 2017.1.24. 2.井ノ口 宗成, 「QRコード使った避難所運営」, 地震・防災チェック~わが家と家族を守るために~, 静岡第一テレビ, 2016.10.1. 3.井ノ口 宗成, 「避難者の現状 アプリで管理 御前崎のNPOが訓練」, 静岡新聞, 2016.9.25. 4.井ノ口 宗成, 「御前崎市 IDカードを使った避難者管理訓練」, NHK静岡ニュース, 2016.9.24.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果から、災害発生後のパーソナルファイル構築にあたり、避難所における被災者特定を基礎とするとともに、在宅避難者については住民基本台帳等の行政が保有する情報をもとに被災者を特定し、パーソナルファイル対象者を設定することが第一ステップとなることが判明した。また、熊本地震および糸魚川市駅北大火において被災者生活再建支援システムを実装し、個人および世帯での支援状況の一覧表示に関する機能設計・開発を終えた。 平成29年度では、各被災地における運用実態を継続的にモニタリングすることで、被災者生活再建支援を進める過程での、被災者と自治体間におけるインタラクションで送受される情報を、実態ベースで解明するとともに、それらを管理するための効果的なデータベースの見直しと、情報送受のためのアプリ実装を推進する。とくに、近距離通信では、その通信帯域の制約から、通信時間と送受される情報量に制約が発生するため、差分のみの情報管理や被災者に提示すべき情報の整備等について研究を継続実施する。また、災害時要支援者や高齢者等におけるスマートホン利用上の課題を整理するとともに、代替手段の検討と、代替手段利用時の情報統合についても研究を実施する。
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