2015 Fiscal Year Research-status Report
再プログラム化技術による人工β細胞ファイバーの作製
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15K16319
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 翔伍 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (40751441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 再生医工学 / 細胞ファイバ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト繊維芽細胞の3次元培養系の確立を行なった。アルギン酸ゲルをシェルに持つコアシェル型マイクロファイバ内にカプセル化する技術、およびマイクロファイバ内培養(細胞ファイバ培養)の条件を検討した。特に細胞ファイバ培養では、細胞周辺環境となるコアに用いる細胞外マトリクス(ECM)の種類と初期細胞密度が重要となることを見出した。コラーゲンリモデリング関連遺伝子の発現パターンに基づき検討したところ、フィブリンコア内において高密度培養した際に、繊維芽細胞特性が最も高い状態になることを確認し、国際学会で報告した。体細胞のリプログラミングには元となる細胞の状態が重要であることが知られており、この知見は、3次元培養繊維芽細胞のリプログラミング方法の確立に大きく貢献するものと考えられる。 また、2次元培養下において、線維芽細胞のインスリン産生細胞へのリプログラミング誘導因子として、複数の低分子化合物の使用条件の検討を行なってきた。リプログラミング現象は全ての細胞で同時に起こるものではないため、培養皿内の一部の細胞集団における遺伝子発現解析が必要である。そのため、顕微鏡下での細胞形態変化に基づく細胞の選定からサンプリング、および解析実験系の確立して進めてきた。ここで確立した実験系は、細胞ファイバ培養におけるサンプリング、および細胞特性評価へも応用可能であるため、今後の実験に役立つものである。 上記の細胞実験系の構築と並行し、薬剤誘導性の糖尿病モデルマウスの作製と、細胞ファイバ移植方法の検討を行った。ストレプトゾシンの腹腔内投与による糖尿病の誘導、および初代膵島細胞をカプセル化した細胞ファイバ移植による血糖値コントロールを行い、動物実験系を構築した。線維芽細胞由来人工インスリン産生細胞ファイバの作製後、すぐに移植実験を行える環境を整えたことで、今後の研究の円滑化に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文で報告されている化合物カクテルのみでは、リプログラミング誘導に不十分であった。これは元となるヒト繊維芽細胞の遺伝的バックグラウンドや、継代数等の細胞状態の違いに起因することが考えられる。そのため、独自の化合物カクテルを考案しその効果を検証することを繰り返し行なってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元培養である細胞ファイバ培養では、細胞特性や刺激に対する挙動が、既報の2次元培養と大きくことなることが考えられるため、リプログラミング過程における細胞モニタリングを詳細に行なう必要がある。これまでに検討してきた化合物カクテルを細胞ファイバ培養下繊維芽細胞に応用し、その経時的な細胞変化をマーカー遺伝子発現等の分子生物学的手法を用いて評価する予定である。 また、現在使用している市販の繊維芽細胞では限界があることも考えられるため、セルバンク等から新規細胞株を導入することも検討していく。さらに、同じ間葉系細胞でもより分化能が高いとされる間質細胞(MSC)の使用を検討する。
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Causes of Carryover |
皮膚繊維芽細胞ファイバ作製実験が、当初予定よりも迅速に進めることができたため、特に培養関連試薬の支出を抑えることができた。 また、培養およびリプログラミング条件の検討および細胞特性評価は、いくつかのマーカー遺伝子発現でスクリーニングを行ったため、本年予定していた網羅的解析が、次年度の研究計画へ移行したため、その分が次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、今年度に検討した実験条件に基づき、細胞ファイバの培養とリプログラミング、および細胞特性解析が必要である。特に、網羅的遺伝子発現解析やエピジェネティック解析には外注も必要であり、そのための費用としての使用を検討している。今年度の研究成果から、当初よりも複数の細胞株および細胞種での検証が必要なことが分かっており、次年度使用額分を割り当てる計画である。
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