2015 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の社会的認知に対する関連要因の解明と神経活動の検討
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15K16388
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
ベ 成琉 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 予防老年学研究部, 特任研究員 (80707894)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / 社会的認知機能 / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
適切な意思決定を行い、円滑な対人関係を形成・維持していくためには、記憶、注意、遂行機能などの高次認知機能だけでなく、社会的認知機能が必要不可欠である。特に、生活構造やライフスタイルの急変に伴い精神機能の低下が出現しやすい高齢期には社会的認知機能の低下が考えられる。本研究では、社会的認知機能の代表的要素である表情認識と共感性に着目し、これらと関連する諸要因を解明するとともに、高齢者の社会的認知機能に関わる神経活動の特徴を探る。 平成27年度は、社会的認知機能に関連する因子とその影響力を明らかにすることを目的とし調査を実施した。従来使われていた社会的認知機能の評価尺度は項目数が多く、重複する質問項目があったため、対象者の負担が大きいと考えられた。そこで、まず、28項目のDaivis (1983)の多次元共感測定尺度の日本語版(桜井,1988)を用いて、300名を対象に予備調査を実施した。因子分析の結果、因子負荷量が大きい8項目を社会的認知機能尺度として作成した。所属研究機関にて実施している高齢者機能健診受診者を本研究の対象とした。対象地域の60歳以上の高齢者11018名のうち、要介護認定者を除外した9700名に高齢者機能健診の案内を発送し、申込者を対象に順次高齢者機能健診を実施した。高齢者機能健診の調査項目の中に、社会的認知機能の調査項目を入れ込み、社会活動への参加状況や生活能力、心身機能などの関連要因に関する質問調査を行った。また、高次認知機能検査を実施した。現在3850名が高齢者機能健診を受けて、データをまとめている。本年度は、引き続き、社会的認知機能に関連する諸要因を分析するとともに、機能的磁気共鳴映像(functional magnetic resonance imaging: fMRI)を用いて社会的認知機能に関わる神経活動の特徴を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画よりやや遅れている理由は次の通りである。第1に、対象地域の協力体制づくりと検査会場の確保に時間がかかってしまったため、研究開始に遅れが生じた。所属機関にて実施している高齢者機能健診は、地域在住高齢者全員を対象に実施するため、自治体の協力は必要不可欠である。1日当たり約100名の高齢者が受診するためには、広い検査会場が必要である。予想人数の検査を実施するためには最低30日間の実施日が必要である。研究開始に少々遅れはあるものの、自治体との定期的な打ち合わせを通じて信頼関係を構築し、協力体制づくりに成功した。 第2に、当初対象者数を2500名と予定していたが、予想以上に多くの人から申し込みがあったため、高齢者機能健診の実施を延長している。実施日を増やして対処しているところである。当初計画よりやや遅れは生じているものの、研究遂行には何ら影響せず、データ収集が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢者機能健診にて得られたデータを集約、分析を行う。社会的認知機能に関する質問調査の回答と社会参加、生活能力、精神心理状態に関する質問調査の回答に加え、高次認知機能検査のデータを統合する。多変量解析により、高齢者の社会的認知機能に関連する要因を明らかにする。なお、高齢者の社会的認知機能に関わる神経活動を検討する。高齢者機能健診に参加した高齢者のうち、社会的認知機能が高い群と低い群に分類する。3テスラMRI装置を使用し、表情認知課題と共感性課題遂行時の脳画像を撮影する。Matlab上の統計処理ソフトウェアSPM8を用いて、課題遂行時における両群間の脳活動領域をt検定によって比較し、社会的認知機能に関わる神経活動を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究開始の遅れに伴い経費の使用についても後年度にずれ込みが生じている。また、効率的な実行に努めたことも相俟って次年度使用額が発生している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度である平成28年度は調査協力への謝礼および研究補助の人件費、物品の購入、研究成果公表のために使用する予定である。
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