2015 Fiscal Year Research-status Report
アフリカ美術におけるキリスト教的図像:フランス人宣教師から見た彫刻表現
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15K16659
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳沢 史明 東京大学, 人文社会系研究科, その他 (10725732)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アフリカ美術 / 宣教師 / フランス / 植民地主義 / アフリカ宣教会 / ベナン |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は主にフランス人宣教師によるアフリカ文化の報告書、論文等の精査および関連する先行研究をもとに、西アフリカ社会における「呪物(フェティシュ)」と彫刻をめぐる議論を精査した。一八世紀後半のCh.ド・ブロスのフェティシズム論を端緒に、民族誌的視点が芽生え始める一九世紀(N・ボーダン)、さらに民族誌的考察の実践を行い始める一九二〇年代の宣教師ら(F・オピエ)の活動を追うことで、アフリカ彫刻がカトリック宣教師らのなかで文化的に評価される過程、及び展示へと至る過程を明らかにした。 とりわけ一九世紀半ばリヨンに拠点を築いた「アフリカ宣教会(SMA)」に着目し、団体の設立や美術館開館の経緯を調べると同時に、歴代の宣教師らのアフリカ文化観ないし彫刻観の比較、考察を行った。その際、一九世紀末にフランスの植民地政策及び大衆文化においてとりわけ関心の高かったダオメ(現ベナン共和国)に関心を払い、同時期の彫刻展示(美術館展示ないし植民地博覧会でのパヴィリオン展示)に関する考察も行った。 前衛的芸術家らの「発見」の逸話や民族誌博物館の設立等の影に隠れてしまう傾向にある、こうした宣教師らのアフリカ彫刻観及び、彫刻展示等への参画の事実を入念に検討できたことは、次年度以降の研究の基礎的研究となりうるものであり、次年度以降の更なる研究成果に繋がるものであると考えている。なお、本年度は上記研究課題に関連して共著書二冊、論文二本の刊行と、学会発表を二回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り資料収集、分析、公表等はおおむね順調に進展している。宣教師関連の資料は国内では入手が難しいものもあるが、本年度は国外の関係諸団体の研究者、専門家らの知己を得ることができたため、必要な資料の所在に関する情報及びその閲覧が容易になったことは大きな進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
二八年度も引き続き「アフリカ宣教会」の活動を分析していくつもりだが、とりわけF.オピエ神父のダオメ文化再評価を軸に、同団体とダオメとの歴史的な繋がり及びアフリカ彫刻観の変遷を辿るつもりである。また、二〇世紀初頭のアフリカ美術評価の際に、ダオメ彫刻がいかに特徴付けられたのか、他のアフリカ諸地域との差異及び類似性を分析し、一九世紀から二〇世紀にかけてのフランスにおけるダオメ文化表象に対しても考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度での研究のため研究課題に関連する基礎的な文献等が多く、資料購入費に予定より多く充当したことと、他の財団より海外渡航費の援助を受けたため、当初予定していたよりも物品費が多く旅費が少ない状況となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、研究課題遂行のための資料購入費へ充当するだけでなく、積極的に国内・国外学会及び資料調査を計画し、十分なスケジュールを立てたうえで、適正に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)