2016 Fiscal Year Research-status Report
アフリカ美術におけるキリスト教的図像:フランス人宣教師から見た彫刻表現
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15K16659
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳沢 史明 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教務補佐員 (10725732)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アフリカ美術 / 植民地主義 / フランス / カトリック海外布教 / 芸術学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「アフリカ宣教会(Societe des Missions Africaines)」に焦点を当て、19世紀後半から20世紀前半におけるフランスカトリックの海外布教とアフリカ彫刻との関わりを考察した。とりわけ、同協会の本部に併設された展示区域の変遷、1894年リヨン万国・植民地博覧会での同協会のパヴィリオン、第一次大戦後の展示区域の再編等に着目し、宣教師らによるアフリカ文化表象の変遷を再構成する作業に努めた。とりわけ、同協会が発行していた雑誌(Echo des Missions Africaine, Frere d'armes)等を用い、1920年、1933年の博物館再編時における展示内容を分析できたことは本研究にとって有意義であり、仮面や宗教的彫刻類を重視したパリを中心とした当時の美術界とは異なる展示構成であったことが明らかとなった。また、20年代後半における同協会所属F.オピエのダオメ装飾芸術展についても分析を進め、フランス各地を巡回した同展覧会の美術評、展覧会資料の渉猟を行った。オピエ本人の見解のみならず、その友人であったG.アルディ植民地学院校長の見解との対比等を通じ、植民地行政と植民地地域へのキリスト教布教との文化的側面における密接な連携を考察することができた。また、これらの作業を通じ、カトリックの海外布教と民族学的展示についても派生的に分析する機会があり、バチカンの民族学博物館初代館長も努めたシュミットの役割についても考察の端緒を得ることができた。 これらの研究実績は、論文一点、研究発表一点、共著一点の形で公表される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカ宣教会に関する雑誌・刊行物を中心に資料の渉猟は研究計画通りにすすめることができている。とりわけ、同協会によって運営された博物館の展示史に関しては、文献資料のみならず、国外の研究者との意見交換等を通じ判明した事実が多数存在する。また、こうした進捗に応じて、定期的に研究論文の発表も行っており、全体的にはおおむね順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるため、28年度までに渉猟した資料、とりわけ19世紀後半から第二次大戦期のアフリカ宣教会を中心としたアフリカ彫刻表象(宣教師F.オピエと、彼の友人であり植民地学院校長を努めたG. アルディとの思想的交流を視野に入れた植民地状況下におけるアフリカ彫刻論など)に焦点を当てた研究発表を準備しつつ、シンポジウムの開催や書籍・論文の刊行を目指すつもりである。また、可能なかぎり、植民地地域カトリック美術を扱う国内・国外の研究者と連絡を取りつつ、本研究と他分野(美術史・宗教史・地域史・人類学など)との学問交流を進め、本研究をステップとした新たな研究領域の可能性を探ることにしたい。
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Causes of Carryover |
予定していた必要図書が、当初予定していた購入予算よりもいくぶん安価で入手できたことに加え、当初よりも備品等の消耗が少なく、次年度使用額が生じてしまった。また、外部の財団からの研究資金が獲得できたこともあり、当初予定していた旅費の多くはそちらからあてることになった。そのためいくぶん当初の支出予定から変更が生じ、消耗品(書籍)の割合が増えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度内に必要な消耗品(筆記用具等)、備品(書籍等)、学会発表の旅費、海外からの研究者招聘の予算等を入念に確認し、予算の適切な使用を行う予定である。とりわけ、消耗品(書籍)は概ね必要なものは揃えることができたので、本年度は研究成果発表のための研究会やシンポジウム等のための旅費・人件費にあてることを考えている。
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