2015 Fiscal Year Research-status Report
障害者の社会参加を目的とした音楽活動における音楽形態に関する研究
Project/Area Number |
15K16666
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
沼田 里衣 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 研究員 (10585350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 臨床音楽学 / アートマネジメント / コミュニティ音楽 / 障害者 / 音楽療法 / 即興音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「障害者の社会参加を目的とした音楽活動における音楽形態に関する研究」は、障害者とそうでない者が参加する音楽活動において、物理的環境、社会文化的背景、人的リソース等の関連からどのように音楽形態が選択、あるいは創造されているのかを調査・分析し、具体的な音楽活用の手法を検討・提案につなげることを目的とする。音楽が多様な価値観を包含するコミュニティを創成する上で果たす役割は大きいが、技術や価値観の差を超えて共同で音楽活動を円滑に進めるための具体的な音楽的方法は確立されていない。本研究は、社会的弱者を含むコミュニティにおけるアートによる可能性を、具体的に提案しようとする試みであり、障害者の社会参加の道を模索する現在のわれわれの社会において大きな意義があるものと考えられる。 本研究は、①障害者を含むコミュニティにおいて用いられている様々な表現形態について、コミュニティのあり方やその地域の社会文化との関連から詳細に観察・分析し、②そこで得られた知見をもとに、新たなコミュニティを考える際の具体的な方法論を検討し、提案することを目的とする。 平成27年度は、国内の障害者を含む即興音楽を主な表現形態とする芸術活動を行う団体を視察し、障害者が主体的に芸術活動に参加できる場のあり方について、「演奏がひろげる人のつながり」というタイトルでまとめた。また、「音遊びの会」と「おとあそび工房」の二つの障害のある人を含む会を主宰し、前者の活動については、芸術、福祉、教育などの領域を超えたコラボレーションや、障害の有無のみならず年齢や国籍も超えた出会いを可能にする音楽づくりについて論文等にまとめた。また、カナダで開催されたコロキアムと、フィリピンで開催された「第10回アジア・アーツマネジメント会議」で事例報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、障害のある人とない人が技術や価値観を超えた方法で対等な立場で共に文化を創出する場を作るための具体的な方法論を検討し、提案することである。そのため、様々な事例調査と共に、実践研究を進めていく必要がある。現在、国内の事例調査は集まりつつあるが、国外の先進的事例との比較研究は途上である。実践研究からは、「おとあそび工房」の活動から、「生の表現」と形容されることの多い障害者のアートを「演じる」という新たな視点から捉える視点が生まれた。理論的考察に関しては、「関係性の音楽」という観点から、音楽学、障害学、美術批評における議論と交差させて概念化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
実践上の課題として、障害のある人とない人が共に表現のあり方を楽しむ場を模索する「おとあそび工房」の活動について、参加者と研究者が意見交換をする場を設け、こうした活動のあり方や意味について多角的に議論を進めると共に、活動内容の充実化を図る。この活動から得られた資料をもとに、具体的な方法論をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
著書を購入の予定であったが、残額が足りなかったため、次年度予算とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料図書を購入予定である。
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