2015 Fiscal Year Research-status Report
ポストヒューマンと心の制御をめぐる歴史--科学的心理学の大衆化と応用の表象文化論
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15K16676
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
篠木 涼 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (00536831)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 視覚文化論 / 心理学史 / 表象文化論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀に大衆化・応用化したアメリカ心理学における心の自律と制御のあり方に焦点を当て、ポストヒューマン論に対して歴史の側面からアプローチしている。研究報告「大衆化と応用のアメリカ心理学史──19世紀末から20世紀初頭を中心に」は、本研究の基本的な背景となるアメリカ心理学史における応用と大衆化が、どのように進展したのかを示した。論文「アメリカ初期裁判心理学におけるミュンスターバーグとウィグモアの論争--大衆への訴えかけと専門家との関係から--」は、心理学の応用と大衆化が展開するなかで法学という他領域の専門家との間で問題を生じた状況を明らかにした。論文「大衆化する心理学における「セルフコントロール」の登場 ―ジョセフ・ジャストロウを中心に―」では、心理学の大衆化における中心概念のひとつであるセルフコントロールを、この動向の中心的な心理学者の言説から明らかにした。論文「科学的管理法における視覚化概念--F・B・ギルブレスと L・M・ギルブレスの動作研究を中心に--」は、産業心理学と関わりの深い科学的管理法での身体のコントロールにおいて、心的物的という二重性をもった概念である視覚化が重要な役割を果たしていたことを明らかにした。研究報告「反応とコントロールの視覚文化論--1960-70年代における行動主義心理学・行動療法におけるイメージについて」は、20世紀後半の行動療法の展開に対して、行動主義についてのイメージと行動主義が使用したイメージの二つの側面から検討を行った。研究報告「The Historical Relationship Between Visual Culture and Psychology: Visuality, Popularization and Communication」は、心理学の応用と大衆化が展開するなかで示した視覚性について整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度前半には二度の研究報告を行い、一本の論文を刊行した。後半にはカナダ・マギル大学東アジア研究科において客員研究員として研究し研究報告を行い、日本国内で二本の論文を刊行した。本科学研究費助成事業申請時には確定していなかったマギル大学への滞在が、2015年度開始以後に確定した。そのため、年度後半の研究計画を変更した。研究計画に変更はあったものの、研究実績については概ね順調に発表することができたと考えている。またマギル大学滞在中に行った研究報告の準備から、2016年度に実施予定の研究への方向性を新たにえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、第一に、2015年度に実施した研究を引き継ぎ、心理学の応用の展開を明らかにするために、第一次世界大戦における軍隊での心理学者の活動を考察すること、第二に第二次世界大戦後の情報科学の展開の時期の社会心理学とマスメディア研究の動向を分析するという二つの方向で研究を推進する。
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Causes of Carryover |
本科学研究費助成事業申請時には確定していなかったカナダのマギル大学への滞在が、2015年度開始以後に確定した。その結果として、年度後半の研究計画を変更することになった。年度後半におけるカナダ滞在中には、研究費を使用しなかった。そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度実施予定の調査及び資料収集に使用する。
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Research Products
(6 results)