2015 Fiscal Year Research-status Report
アゼルバイジャン語における疑問接語の生起位置と生起条件に関する研究
Project/Area Number |
15K16740
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉村 大樹 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (80522771)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アゼルバイジャン語 / トルコ系諸言語 / 形態論 / 統語論 / 対照研究 / 接語 / 疑問文 / トルコ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、アゼルバイジャン語における疑問接語の文法的な特徴を、当該言語の調査、およびトルコ語などの他のトルコ系諸言語、または日本語と対照することなどを通じて明らかにすることである。この目的にむけて、平成27年度(2015年度)はアゼルバイジャン語の関連する様々な構文に関するデータの収集をはじめとして、他言語との対照の準備を開始するということを目標に設定していた。この目標にむけて、まず本研究において疑問接語の生起位置と密接に関連する動詞の形態論的枠組みに言及する必要があった。このため、まずアゼルバイジャン語の資料収集に先がけた準備的研究として、アゼルバイジャン語と言語系統的にきわめて近いトルコ語の動詞形態構造を日本語と対照するという目的で、2015年6月にアンカラ(トルコ)にて開催された第14回トルコ日本語教師会にて口頭発表および論文公刊を行い、いわゆる日本語の連用形(「マス形」とも呼ばれる)と類似した形態構造がトルコ語にも見られることを論じた。この成果により、動詞または述語の形態がトルコ語と相当類似しているアゼルバイジャン語の形態論的分析にも直接応用可能であることが期待される。また、2015年9月には国立国語研究所(東京、日本)にて「比較的観点から見た係り結び」にて口頭発表を行い、同じくトルコ語の疑問文の構造が古代日本語に見られるいわゆる「係り結び」構造とどの程度の類似点・相違点を有しているかを検討し、トルコ語の疑問接語が古代日本語のいわゆる係助詞と統語的に類似している点があることを認めつつ、述語部分の形態・統語的ふるまいが異なる点などを確認した。なお同発表ではトルコ語の疑問接語に関する先行研究の問題点を確認した。これは、本研究においてアゼルバイジャン語疑問接語の文法的ふるまいに関する理論的枠組みを提示するための準備的段階として位置づけることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度はアゼルバイジャン語に関連する図書・文献資料の収集、および現地調査をほぼ予定通り遂行した。アゼルバイジャン語の用例を収集するため、2016年1月21日から31日の日程でバクー市を訪問し、疑問文を含むアゼルバイジャン語の文法、言語研究に関連する資料を入手することができた。また現地訪問時に、事前に作成していた疑問文調査票に従って作成したアゼルバイジャン語の例文に対する容認性に関するインタビューを行った。当初は3名程度からの聞き取りを予定していたが、現地研究協力者のご協力をいただき、現地の大学生の男女13名、および研究協力者ご自身もインタビューに回答してくださった。このため、当初の予定より多くの回答を得られたことにより、より精度の高い容認性判断の傾向をつかむことができたと考えている。音声資料の収集は当初の計画より遅れているが、今後現在研究拠点としているトルコにて、必要に応じて現地在住のアゼルバイジャン語母語話者に音声の録音を依頼することで補填可能であると考えている。また研究に関連する文献については、上記の通り研究拠点をトルコに移していることで、トルコ系諸言語に関する最新の成果が反映された資料に容易にアクセスすることができている。なお、以上の調査で得られたアゼルバイジャン語疑問文結果の考察については、2016年度にトルコにて開催される「国際トルコ語言語学国際会議」で口頭発表論文として採択されている。 本研究課題の申請において設定した目的の一つにトルコ語やウズベク語など、他のトルコ系諸言語、および日本語疑問文との対照があるが、この課題についてもおおむね順調に準備を進めており、2016年度にトルコにて開催予定の「トルコ日本語教育言語文化シンポジウム」に口頭発表を申請している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究の拠点を関連する研究が盛んに行われているトルコにおく。また、前年度のアゼルバイジャン語に関する現地調査で得られたデータの考察を進めていく。現時点で、当初予期していたよりアゼルバイジャン語の疑問接語の生起可能な位置が広いことが判明している。これについては、上記の通り2016年8月にトルコで開催される「第18回トルコ語言語学国際会議」での口頭発表が内定している。また、日本語等との対照については同じくトルコで6月開催予定の「トルコ日本語教育言語文化シンポジウム」への応募等、日本国内外での学会・研究会で積極的に発表していく予定である。また、これまでの研究でアゼルバイジャン語の疑問接語はトルコ語における類似形式とは根本的に異なる形で基本的には出現せず、特定の条件が存在するときにのみ出現すると説明できる可能性が浮上している。このことを裏付けるための現地調査を、再度バクーで行う予定である。 また、対照する言語の1つである日本語の考察を進めるための日本国内での関連する文献収集、および研究代表者が本研究で直接研究対象としないトルコ系諸言語の研究を推進するために、研究協力者として1名を任命し、承諾を得ている。これにより、より効率的に研究が推進できることが期待される。
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Causes of Carryover |
研究遂行に必要な備品としてノート型パソコン、資料収集のために必要なデジタルカメラ等の機器、および当該年度の研究に必要最低限の図書を購入し、現地調査のための旅費も予定通り支出した。しかし、研究計画当初はいくつかの学会・研究会での発表に伴う旅費を予定していたがそれらが遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究遂行に必要な最新の言語学書および関連諸言語の語学書等、関連する和書・洋書の購入を中心にあてる。
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