2016 Fiscal Year Research-status Report
アゼルバイジャン語における疑問接語の生起位置と生起条件に関する研究
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15K16740
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉村 大樹 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (80522771)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アゼルバイジャン語 / トルコ語 / 対照研究 / 統語論 / 疑問文 / 形態論 / テュルク諸語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は9月10日から15日まで、アゼルバイジャンに1週間程度渡航し、前年度に引き続きアゼルバイジャン語疑問文の調査、およびアゼルバイジャン語各種方言に関する資料の収集を行った。また、本研究課題の意義と成果についてのアウトリーチ活動として、2016年11月に日本(東京外国語大学)にて他科研研究者との合同ワークショップ「アジア地域の言語と文化~少数言語研究の最前線~」に参加、ポスター発表および講演を行った。 前年度の現地調査で得たアゼルバイジャン語疑問文の容認性に関する調査結果について分析を行い、その成果を、2017年2月に開催された「第18回トルコ語言語学国際会議」にて発表した。この発表では、疑問接語が文中に生起できる範囲は当初の予想よりも広く、存在文やあるタイプの複文構造を覗いて、様々な範囲に出現できる一方、口語ではこの疑問接語そのものの使用を避ける傾向にあることから、同系統のトルコ語などと比較すると一見出現範囲が狭いように見えているということを論じた。このフルペーパーは今年の6月までに同会議に提出、後日公刊される見込みである。 また、アゼルバイジャン語と同系統の言語であるトルコ語の疑問接語と、日本語において一般に疑問を表すマーカー(「カ」)についての対照分析を行い。その成果を論文として公刊した。この論文では、日本語の「カ」は疑問文の成立に必須の要素ではない一方、トルコ語では周辺的な疑問をあらわす文を除けば、基本的には質問文に必須の要素であるという違いを指摘した。この点ではアゼルバイジャン語はトルコ語と同系統でありながら、疑問接語の機能としては日本語の「カ」のほうが近いということもできるということを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題のうち、疑問接語の生起位置については研究申請時の予想よりも広い範囲に分布していることが明らかになったという成果が得られたが、もう一つの主要課題である生起条件(つまり、いつ生起する、またはしないのか)については当初の予想より複雑な状況にあることがわかったため、明確な解答を現時点で提示するに至っていない。また、テュルク諸語のうちトルコ語やアゼルバイジャン語が属する南西語群以外の言語についても調査が必要であったが、研究協力者から得たデータについての、研究代表者自身の分析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、研究拠点をトルコ(アンカラ)に置き、テュルク諸語の言語学的研究についてアゼルバイジャン語だけでなく幅広い言語を視野に入れつつ研究を進めていくこととしたい。 疑問接語の生起条件についてはいくつかの要因があり、文体の違い、地域方言による差などがその中で大きな要因であることはわかっているが、一方で全く疑問接語を使用しないと言う言語話者でも、典型的な質問ではない疑問文において疑問接語を使用している可能性がある。今年度はこのことに関して再度現地調査を行い、一応の解答を提示したい。また、前述の、南西語群以外のテュルク諸語のうちいくつかの言語についても分析を進め、アゼルバイジャン語における疑問接語の特徴をさらに明確にしたい。これらの成果をまとめ、国内外における発表、および論文公刊を引き続き最終年度も精力的に行っていきたい。
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Causes of Carryover |
前年度で執行できなかった使用額を使用し、2016年度は研究推進に必要な図書の購入に宛てた。その分はほぼ予定通りに執行できたが、研究発表および現地調査にかかる旅費が、当初の予定よりも回数・日数ともに下回ったため、上記金額の通り次年度使用額に持ち越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は当研究課題の最終年度となるため、研究発表にかかる国内外の旅費、および英文論文投稿のための校閲費に充てる予定である。
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