2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16847
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
海老根 量介 学習院大学, 付置研究所, 助教 (30736020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 包山楚簡 / 日書 / 楚 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、包山楚簡の訳注作成のための準備を進めるとともに、訳注作成にも着手した。包山楚簡は、訴訟に関する記録が大部分を占める文書簡、墓主の健康について占った卜筮祭祷簡、副葬品の目録・葬礼の贈り物の記録である遣策等の3種類から成り、墓主の名前・官職・墓葬年代まで判明している希少な一次資料である。発掘から20年以上が経過し、包山楚簡の関連研究はすでに膨大な数に達しているため、まずは文献目録を作成し、関連する文献を網羅的に収集した。また長期休暇を利用して、8月に武漢大学歴史学系・簡帛研究中心、復旦大学出土文献与古文字研究中心を訪問し、出土資料・古文字に関する最新の研究について情報収集を行った。さらに、9月にミシガン大学を訪問して同大学所属の中国語音韻学者と交流を持ち、現地の読書会にて報告する機会を得た。日ごろ接することの少ない音韻学方面からのコメントをいただくことができたのは貴重であった。 これらの活動の成果をいかしながら、文書簡を中心に訳注作業を進めたが、文書簡だけではなく卜筮祭祷簡についても適宜読解を進めた。また、卜筮祭祷簡との関わりも指摘される「日書」について、その性質を中心に研究を行い、学会報告を行った。加えて、卜筮祭祷簡や「日書」が流行したバックグラウンドとしての楚の社会構造について考察する必要性から、上博楚簡や青銅器銘文などの新出土資料や伝世文献を材料として用いて論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、包山楚簡の関連論著目録を作成し、文献や研究の収集につとめ、訳注に着手した。予定では平成27年度中に文書簡の訳注を完成させる予定であったが、文書簡の一部しか完成しなかった。しかし、その一方で卜筮祭祷簡の解読については、部分的ではあるが進めることができた。また包山楚簡だけでなく「日書」との関係、包山楚簡や「日書」の拠って立つ楚の社会について、新出土資料や伝世文献をもとに考察を行うことができた。そのため、当初からは研究内容を部分的に変更したが、次年度以降の課題を先取りして行うことができたため、全体の計画からすれば順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き包山楚簡の訳注を進め、完成・公開することを目指す。関連文献収集はかなり進んでいるので、新しく出された研究を補いつつ、それらをもとに解読を進める。若手研究者で組織した読書会や、出土資料を扱う研究者が開催している研究会において訳注を発表し、精度を高めたい。訳注は何回かに分けて、順次雑誌に投稿できるように内容をまとめていく。 また訳注作業と並行して、読解の結果明らかになった知見を論文としてまとめていくことも行う。
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Research Products
(2 results)