2016 Fiscal Year Research-status Report
北朝~隋代華北地域の交通路に関する実証的研究―摩崖石窟等を手掛かりとして
Project/Area Number |
15K16850
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
北村 一仁 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60748028)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 交通路 / 中国 / 摩崖・石窟 / 造像銘 / 関門遺跡 / 山西省 / 北朝 / 境界地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,山西省及び河南省における北朝~隋期の交通路と摩崖・石窟についての調査・研究を行った。今年度の補助金は,中国での現地調査・学会参加費用と,関係書籍および必要な物品の購入に充てた。
〇現地調査に関して:2016年7月,山西省臨汾市・長治市・晋城市・河南省鄭州市で調査を行った。成果としては,従来ほとんど注意されなかった沁河沿いの交通路、中でも沁源から安沢を経て沁水・陽城(いずれも今の県名)に至る交通路について,実際に踏査できたことが挙げられる。加えて,その路傍に位置する摩崖石刻・石窟,造像碑などの調査も併せ行い,北朝期における当地の交通路の姿を描く手がかりをつかむことができた。また先の調査で行けなかった山西・河南境界地域の沁河流域(山里泉風景区付近)に行けたことも,成果の一つとして挙げられる。翌8月には,湖北省襄陽市で開催された「秦漢魏晋南北朝国際学術研討会」に出席し,「南北朝時期鄂豫地区的“蛮”和水陸交通」という報告を行い,内外の研究者と交流をもった。学会終了後は,南陽市鎮平県登禅寺にて「白実造像碑」を調査,碑中に新たな銘文を発見,併せて同寺の住持・釈聖地氏と交流した。それから南陽・魯山間に位置する南北朝期の「三ア路」の踏査および,ケイ陽・新密を結ぶ交通路と関係がある,ケイ陽市の王宗店・ケイ河両石窟を調査し,前年度の調査の補いとした。2017年3月には,山西省晋中・長治・臨汾・太原各市において調査を行い,前年7月の調査を補完した。特に交通上重要な位置にある安沢県の海東摩崖の調査において,文字の存在を確認できたほか,沁県の庶紀村で見つけた石刻については,『文物地図集』にも該当する記載がないなど,新発見の可能性がある。
〇成果に関して:2015年度の調査に関する成果の一部について,上述した学会で報告を行った。この報告は,2017年内に発行される同学会の論文集に掲載予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の予定になかった学会参加のために予算が圧迫され,春の調査を予定の半分の日程で行わざるを得なくなった。ただその分学会後8月の河南省調査にて,想定以上の成果も得られた。 一方で山西省においては,当初の見積り以上に,交通路の存在を考察する上で手がかりとなる摩崖石刻・石窟が多いことが判明し,かつそれらは概して辺鄙な場所にあることが多く,一層丁寧な調査が必要なため,申請時の計画と比べ,実地調査の面において,やや遅れが生じていることは否めない。一方で,成果の整理については計画通りに進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では,2017年度は陝西省を中心とした地域の調査・研究を行う予定であったが,上述した理由によって,丁寧な調査・研究が必要なために,2017年度も引き続き山西省の調査を行う。 具体的には,まず8月に河北省邯鄲市で開かれる学会にあわせて,山西省晋中市から長治市,そして河北省邯鄲市に跨る交通路と摩崖・石窟の調査を行う(2週間程度)。そして2018年3月には,同じく2週間程度,太原市から臨汾・運城市にかけての汾河流域を調査する。なお上述の学会では,本科研で得られた成果の一部を報告する予定で,現在既に準備を進めている。
|
Causes of Carryover |
2017年3月調査の際の現地交通費(立て替え払い)に必要なので,その分を余裕をみて確保しておいたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍および物品の購入,もしくは旅費に充当する。
|