2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Late Russian Empire between Odessa and Vladivostok
Project/Area Number |
15K16860
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
左近 幸村 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (30609011)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロシア史 / 海事史 / グローバルヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで実施してきた本研究の意義は、主に以下の4点にまとめられる。 第一に、ロシア史研究者の間で知られているものの、断片的にしか明らかになっていなかったロシア義勇艦隊の歴史を、1878年の設立委員会から革命後内戦期の消滅まで、ほぼ全体を通じて描いたことが挙げられる。むろん、まだ多くの課題が残っており、今後修正を迫られる部分もあるだろうが、義勇艦隊の歴史を設立から消滅まで通して見た研究は日本はもとより、海外にも存在せず、大きな意義があると考えている。 第二に、北方汽船やロシア東亜汽船など、言及はされても、義勇艦隊以上にその実態がつかめていなかった汽船会社の研究を行い、その歴史を描き出したことである。これらの船は、南アジアからの茶の輸送や、ニューヨークへのユダヤ人移民の輸送に活躍し、義勇艦隊のライバルとなった。こうした活動の実態を知ることは、ロシアと世界経済の関係を考えるのに、重要な手がかりとなる。 第三に、ロシア海運史におけるヴィッテの構想の意義に着目し、その構想がヴィッテ全体のプランとどのように結びついていたかを論じた。そのために、ヴィッテの対東アジア政策のみならず、対イラン政策も検討した。 第四に、以上の研究を総合して、「第一次グローバル化」とも呼ばれる、1870年頃から始まる世界経済の一体化と、ロシア帝国との関連を明らかにした。グローバルヒストリーの中にロシア史を位置づける試みであり、これも世界的に見ても珍しい試みである。 最終年度は主に、これまでの成果を本としてまとめるために費やした。現在、出版社と打ち合わせをしながら、刊行のための用意を進めている。
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