2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16870
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
南 健太郎 岡山大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60610110)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 銅鐸 / 使用痕 / 赤色顔料 / 鋳造痕跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、銅鐸の使用痕跡の客観的評価(デジタルマイクロスコープでの観察・レプリカSEM法による)から、銅鐸使用圏の周縁部にあたる中・四国地域における使用実態を明らかにし、弥生時代の祭祀構造を立体的に明らかにすることを目的としている。実作業としては銅鐸の集成、使用痕跡の観察が中心となる。今年度は全国的な銅鐸の集成、岡山県内所蔵銅鐸の調査をすすめた。集成はすでに公表されている2007年までのデータを基に、それ以降に出土したものを中心に行った。また資料調査・見学は岡山県立博物館、井原市教育委員会、津山市教育委員会、岡山大学において行った。 資料調査では銅鐸の使用から廃棄に至る多くの痕跡を確認できた。観察は銅鐸の鈕・内面突帯、外表面における磨滅の進行状況に着目した。使用痕跡は新しくなるにつれ明瞭さを失い、突線鈕式(Ⅱ式)では確認されなかった。突線鈕式の前段階にあたる扁平鈕式では古段階は内面突帯の使用痕跡が確認できるが、新段階では明瞭ではない状況がみられた。銅鐸の性質が「聞く」ことから「見る」ことへどの段階で転換するのかということについての重要な知見を得ることができたといえる。また特に注目される成果として赤色顔料の使用、文様の追刻を確認できた点が挙げられる。文様の追刻は扁平鈕式古段階、赤色顔料の使用は扁平鈕式新段階でみられ、今後も類例の抽出を続ける必要がある。 研究成果の一部は岡山大学埋蔵文化財調査研究センター編2016『吉備の弥生時代』で公表し、銅鐸やその模倣品の出土状況から弥生時代中期~後期における岡山県南部地域での銅鐸保有・使用の意義についてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岡山県内の資料については順調に調査を行うことができた。ただし資料の状態(錆などによる腐食、土の付着、欠損の多い資料など)により実施計画に挙げていたレプリカSEM法を導入できないものが多かった。このため調査の主体を肉眼観察、デジタルマイクロスコープによる観察に切り替えた。また中・四国での観察が難しい場合は同笵銅鐸や周辺地域の同型式資料によって補完していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
資料調査を継続して行い、どの段階の銅鐸にどのような使用痕跡が残されているのかに関するデータを収集していく。資料調査は中・四国地域の銅鐸を中心に進めるが、今後はそれらと同笵関係にある資料についての調査を行う必要がある。それによって使用実態の地域間比較が可能となり、銅鐸使用圏周縁部の特徴がより明確になると考えられる。また使用形態へのアプローチとしては舌を伴った銅鐸・小銅鐸の調査も重要となる。平成28年度以降はそれらの資料調査も並行してすすめていく。 また調査方法としてはレプリカSEM法に耐えうる状態の資料が少ないことから、肉眼・デジタルマイクロスコープによる観察を中心に行っていく。
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Causes of Carryover |
平成27年度はレプリカSEM法に伴う研究補助としての人件費を執行予定していたが、資料状態によりレプリカSEM法断念せざるをえない状況が生じたため、使用を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に集成資料の整理を目的とした人件費として使用する計画である。
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