2015 Fiscal Year Research-status Report
帰化制度における立法裁量・行政裁量に関する比較憲法学上の研究
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15K16921
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
ペドリサ ルイス 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60511988)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 帰化 / 国籍離脱の自由 / 機能主義 / 外国人の権利 / スペイン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、主として帰化制度に関する論理的な研究をすすめ、次年度に行う研究の土台をかためた。比較憲法学において主流である機能主義方法論を用いて、外国人の基本権保障の観点から帰化制度の果たすべき機能を定義し、帰化の理想モデルの提案を考えた。また、その理想モデルを研究の対象となる調査国の具体的な帰化制度を評価するために用いられるか否かを確認した。当該年度は予定通り、専ら日本とスペインを研究対象国として、各国の帰化制度を徹底的に調べた。まず、日本については、帰化制度に関する最新の文献・資料を収集し、精読した。研究の成果として、日本国憲法第22条が保障する「国籍離脱の自由」を帰化の憲法上の根拠として捉えることができるのではないかという、予想していなかった着想を得た。日本憲法学界において、国籍離脱の自由は日本国籍を有しない外国人に保障される基本権ではないという解釈は異論を見ないほど、通説の位置を占めているが、私は、国籍離脱の自由は、国籍が自由に選択できるロジックを内在しているゆえ、同基本権から外国人が日本国籍を自由に申請できる自由が読み取るのではないか(これを、帰化へのアクセス権)、という斬新な憲法解釈を試みた(研究報告を5月16日本スペイン法研究会にて報告)。一方、スペインについては、現地調査を行ったことにより、帰化制度に関する最新の資料を収集し、かつ帰化申請などを取り扱う実務家の個別インタビューを行うことによって実務の状況を把握することができた。一方、当該年度後半から、研究対象を増やす機会に恵まれたので、オーストラリアとイギリスを訪れ、貴重な資料を入手することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①帰化の理想モデルを憲法学の観点から提案するという目的を達するために準備作業が修了した。②調査国として予定したスペイン及び日本の帰化制度を理解する基本的な情報を既に入手した。③スペインでは帰化申請を実務とする専門家とのネットワークを築いた。④従来、日本憲法学者からそれほど研究の対象とならなかった国籍離脱の自由に関する斬新な憲法解釈論を唱えた。⑤当初予定していなかった調査国を予算内で研究に追加することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、調査国として予定している米国の帰化制度を調査する。また、もう一つの調査国としてオランダを訪れる機会があるので、予算の許容する範囲でその可能性が実現可能か否かを検討する。新たな発展として、果たして「帰化へのアクセス権」という新たな概念は日本国憲法22条に関する日本国憲法論としての妥当性をさらに検証したい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究課題に関する研究会を開催することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究会の開催に使用する。
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Research Products
(4 results)