2017 Fiscal Year Annual Research Report
Research on legislative and administrative discretion in naturalization from a comparative constitutional law perspective
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15K16921
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
ペドリサ ルイス 獨協大学, 法学部, 准教授 (60511988)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 帰化制度 / 国籍法律主義 / 国籍離脱の自由 / 制度的保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
帰化は、日本国籍取得を内実とする制度である以上、外国人の人権保障ないし日本の政治機関に対する責任追及に関わる事項として極めて重要な憲法上の意義を有するはずである。にもかかわらず、戦後日本憲法学において、帰化は十分な憲法学上の研究対象となっていなかった。日本の憲法学者は帰化に対して、十分な関心を持たなかった原因として、国籍法律主義が採用されている以上、国籍取得に関する事項を決定するに当たって国会の広範な裁量権が認められることにある。しかし、最高裁の判例から導出できるように、国会に与えられた裁量は無限界ではなく、憲法上及び国際法上の諸要請を尊重しなければならない。 本件研究において、スペイン、米国、英国、オーストラリア、イタリアの国籍・帰化制度を比較法の観点から検討し、日本国憲法の解釈論として、立法府が尊重しなければならない憲法上の要請を考察した。そこで、帰化を一種の制度的保障として構成し、その核心として次の2機能を指摘した。すなわち帰化は、①憲法上保護されている諸権利について完全な享有資格を取得する途として機能し、そして②国民になった個人の政治参加を可能にするものとして、いわゆる民主主義の赤字を是正する機能も果たす。一方、本研究で明らかになった帰化制度の機能から導かれる結論として、日本国憲法22条2項が何人にも保障する国籍離脱の自由について、従来日本の憲法学によって行われなかったグ憲法解釈を提案した。国籍選択の自由という国際法上の原則を踏み台に、憲法22条2項は何人もの「帰化への権利」を保障していると解釈し、日本国籍にアクセスする権利を内容とするものとして、日本と密接な結びつきを持つようになった外国人が帰化のために国籍が定める諸要件を客観的に満たしたとき、国籍を取得する正当な期待として解されうる。その意味では、帰化への権利は、帰化申請に対する行政機関の裁量権を拘束する。
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