2016 Fiscal Year Research-status Report
国連安全保障理事会における「補完性原則」の意義と機能―国際立憲主義の模索―
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15K16927
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
丸山 政己 山形大学, 人文学部, 准教授 (70542025)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 補完性原則 / 国連安全保障理事会 / 欧州連合 / 欧州人権裁判所 / 国際立憲主義 / 国際立法 / 狙い撃ち制裁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度までに収集・分析した資料を踏まえて、欧州連合や欧州人権裁判所における「補完性原則」の成立背景や具体的な機能、近年の動向を検討した。もちろん、それら自体が現在論議の対象となっており、全体的・網羅的な理解にはもう暫く時間がかかる。ただ、本研究の目的である、国連安全保障理事会における補完性原則の可能性を探るという観点からは十分な示唆を得られた。 実際に、欧州連合や欧州人権裁判所(また、国連安全保障理事会も含めて)の動向に刺激されて、学術的にも国際法一般の観点から補完性原則を検討する試みが現れていることも分かった。 そうした実行分析や理論的検討から示唆されることは、次の通りである。補完性原則を根拠づける要因としては様々なものがあり得る。加盟国家の同意、広い意味での経済的効率性、民主的正当性の考慮、個人の福祉・人権などである。どの考慮要因に重点をおくかによって補完性の働く方向は異なり得る。つまり、補完性原則は必ずしも国家に有利に働くというわけではなく、人権や民主的正当性の埋め込まれた補完性を構想するとき、場合によっては国際組織に有利に働くこともある。むしろ、その場合の条件付けが検討されるべきということである。 以上のような知見について、国連安全保障理事会の文脈に当てはめて検討を加え、2017年1月28日開催の第374回東大国際法研究会で報告を行った。様々に有益なコメントをいただいたので、来年度はそれを活かす形で論文化していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は資料収集に重点をおいて中身の本格的な検討には踏み込めていなかったが、本年度は欧州連合と欧州人権裁判所の実行の検討が一定程度、程度進んだ。さらに、報告の機会を与えられたのを機に、素描には留まるが国連安全保障理事会の文脈における検討も進めることができた。 加えて、欧州人権裁判所において、国連安全保障理事会との関係で大変重要な判決(Al-Dulimi大法廷判決)が出たため、その判決内容の分析も一定程度、進めることができた。理論的な整理は今後の課題であるが、同判決は本研究にとっても重要な示唆をもたらすものである。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、これまでの検討結果を論文にまとめる作業に重点をおく。さらに余裕があれば、当初研究計画に示していた国際刑事裁判所の文脈における補完性原則の検討に着手する。しかし、ICCにおける補完性原則は近年かなり動揺しているように見受けられ、最終年度中にまとめることは困難なことが予想される。ただ、このこと自体、当初研究計画において予想していたことでもあり、研究全体の進捗状況としては問題ないと考えている。
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Causes of Carryover |
当初計画で想定していたように、国際刑事裁判所関係の検討を先延ばしするという対応を行ったため、その分の図書購入費を次年度使用額に回したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際刑事裁判所関係図書を購入する。
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Research Products
(3 results)