2016 Fiscal Year Research-status Report
漁業資源の保存管理とWTO:漁業資源管理レジームと国際通商レジームの競合と調和
Project/Area Number |
15K16930
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石川 義道 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (90749061)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | IUU漁業 / 地域漁業管理機関 / 貿易関連措置 / RFMO / WTO |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は漁業資源管理の中でも「違法・無報告・無規制(illegal, unreported and unregulated: IUU)漁業」に着目し,IUU漁業の規律を巡る漁業資源管理レジームと世界貿易機関(WTO)の関係について分析を行った。
IUU漁業対策を目的とした貿易関連措置の1つとして,「IUU漁業を規制しない特定国からの水産物への輸入制限」を挙げることができる。IUU漁業については,国連食糧農業機関(FAO)で採択された「IUU漁業を防止,抑止,排除するための国際行動計画(IPOA-IUU)」を中心に,各種の「地域漁業管理機関(RFMO)」を通じて規律される構造となっている。1990年代後半から2000年代前半にかけてRFMOではかかる措置の実施が積極的に締約国に勧告されてきたが,2010年代になるとそれは殆ど行われず,更にかかる措置を新たに勧告するための条件を巡って締約国間で合意に至るのが困難な状況が続いている。
このような動きを受けて,RFMOにおいてかかる輸入制限措置の重要性を説いてきた欧州連合(EU)は方針を変更し,2010年からは国内法に基づいて一方的に輸入制限措置を課している。そして,その背景にIUU漁業規律を巡るWTOの役割の増加を見出すことができる。当然のことながら輸入制限措置に対してはWTOの規律が及ぶことになるが,それでもEUおよび米国が一方的な輸入制限措置に訴える背景には,「輸入制限措置がIUU漁業対策を目的とする場合であっても,RFMOではなくWTO(そこではGATT20条との関係で先例が積み重なっている)において,問題処理を図る(輸入制限を受ける国から提訴が行われる限りで)」という各国の選好があると考えられる。その限りにおいて,IUU漁業の規律を巡るWTOの役割が増加(同時に,その限りでの,RFMOの役割の低下)を見出すことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】で述べたように,2016年度は研究計画に基づいて,漁業資源管理の中でもとりわけ「IUU漁業対策を目的とした貿易関連措置」を巡る漁業資源管理レジームとWTOの関係について検討・分析を行った。そこでは,とりわけ両レジーム間の動態的な関係として,「貿易関連措置を通じたIUU漁業の規制を巡るWTOの役割増加,同時にこの点に関するルール形成を巡るRFMOの役割の低下」を見出すことができる,と指摘した。
そこでの検討・分析結果をまとめたものを,2017年3月に『成城法学』より論稿として発表した(【研究成果】を参照)。これに加えて,2017年度に予定していた研究についても,すでに着手をしている。
以上を考慮して,本研究課題の進捗状況として「おおむね順調に進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の研究計画に従って引き続き研究を進めていき(関連機関でのインタビューを含む),その成果についても積極的に公表していく予定である。加えて,研究計画調書の4頁(研究計画・方法の「4. 本研究を遂行する上で具体的な工夫」)で「積極的に研究報告の機会を利用していく」と述べたように,前述した2016年度の研究成果について研究報告の機会(国内または外国を問わず)を積極的に利用していく予定である。
なお,現時点で研究計画の変更は予定しておらず,また研究を遂行する上での特段の課題が新たに生じた,という事もない。
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