2017 Fiscal Year Research-status Report
漁業資源の保存管理とWTO:漁業資源管理レジームと国際通商レジームの競合と調和
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15K16930
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石川 義道 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (90749061)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | IUU漁業 / 地域漁業管理機関 / 貿易関連措置 / RFMO / 世界貿易機関 / WTO |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は当初の研究計画に従い,また昨年度の業績(成城法学で公表された論考)をさらに発展させるべく,漁業資源管理の中でも引き続き「違法・無報告・無規制(illegal, unreported and unregulated: IUU)漁業」の問題に着目し,IUU漁業対策として特定国からの水産物に対する輸入制限措置とWTO協定の整合性について検討を行った。
そこでは具体例として,2010年1月より欧州連合(EU)で施行される「IUU漁業規則(理事会規則1005/2008)」の下で,特定国(IUU漁業の防止,抑制,廃絶に非協力的と認定された国)に対してとられる輸入制限措置をとりあげ,それがWTO協定,とりわけ1994年の「関税及び貿易に関する一般協定(GATT)」の下で「有限天然資源の保全に関する措置」として正当化されるかが検討された。なお当該研究の成果については,2017年12月に外務省内で開催された国際経済紛争解決研究会において,「IUU漁業対策としての輸入制限措置とWTO協定」というタイトルで報告された。
IUU漁業規則の施行以降,EUは当該規則の下で複数国に対して輸入制限措置を課してきたが,現在までかかる措置がWTO協定に違反するとして輸出国がWTOに提訴を行った事例は存在しない。もっとも,これまでにEUが輸入制限の対象としてきたのは比較的経済規模が小さい諸国であり,将来的には水産物の輸出大国(タイなど)に対して輸入制限措置が課され,そこからWTO紛争に発展する可能性も排除できない。従って,IUU漁業対策としての特定国に対して課される輸入制限措置とWTO協定の整合性について現時点で検討を行うことには,一定の意義があると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上の【研究実績の概要】で述べたように,2017年度は当初の研究計画に基づき,また昨年度の研究成果をさらに発展させるべく,漁業資源管理の中でもとりわけIUU漁業対策としての輸入制限措置とWTO協定の関係について検討が行われ,またその成果についての報告も12月中旬に行われた。しかしながら,参考文献および関連する事例の数が多く,そこに至るまでの分析・検討に予想よりも多くの時間を要した。また,前述した研究報告で行われた議論をさらに発展させるべく,かかる輸入制限措置と一般国際法との関係についても現在検討を行っている最中である。
以上から,本研究課題の進捗状況として「遅れている」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度末に,当該科研費事業の補助事業期間(当初3年間)について1年間の延長が承認された。
そこで4年目となる2018年度は,上の【現在までの進捗状況】でも言及したように,昨年度に行った研究報告での議論をさらに発展させるべく,IUU漁業対策としての輸入制限措置について,WTO協定とは別に一般国際法上における評価を行い,その上で両者の対比を試みる予定である。また当初の研究計画に従い,関連する地域漁業管理機関でのインタビューを実施したいと考えている。そして,そこで得られる成果についても積極的に公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度の終盤で既に補助事業期間の延長を念頭に置いていた。そのため,延長期間年度の計画(前述)を実施するために一定の使用額を残したため,2018年度に使用額(123,440円)が生じた次第である。
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