2015 Fiscal Year Research-status Report
国家と市場の役割の変容と市民社会:国家補助規制の意義とその正当化原理
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15K16936
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
青柳 由香 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 准教授 (60548155)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | EU / 国家補助 / 競争法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国家や自治体が事業者等に対して付与する助成金や補助金が競争を歪曲する効果を有 するという問題について、EU における国家補助(State Aid)規制を比較法的検討の題材として、以下の2つの課題を明らかにするものである。(1)日本において公的補助(助成金・補助金等)を競争の観点から規律する必要性があるか、(2)公的補助規制の正当化原理はいかなるものか(日本とEU の比較法的検討) 研究計画において、平成27年度は「規制の必要性の根拠づけ」に関して、EU の先行研究の検討を中心に実施することを主たる課題としていた。具体的には、資料収集を行いつつ、先行研究の分析を通じて、具体的に公的補助が市場における競争を歪曲する過程とその特徴を明らかにすることがこの課題の内容である。そこで、EU のウェブサイトや欧米の法律関連データベースであるWestlaw やLexisNexis 等を活用して資料を集めたほか、マックスプランク研究所(ドイツ、ミュンヘン)およびレーゲンスブルク大学図書館(ドイツ、レーゲンスブルク)において、オンラインでは収集できないデータ化されていない文献を収集した。収集した文献を整理し、重要なものから精読をしている。 また、ブリュッセルで開催されたカンファレンスに参加することを通じて、EUにおける国家補助制度の運用についての最新の実務および学術的な動向に関する知見を得ることができた。 また、本研究課題に関連して、経済産業研究所のプロジェクト内、および国会図書館において報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は「規制の必要性の根拠づけ」に関して、EU の先行研究の検討を中心に実施することを主たる課題としていた。同年度には、レキシスネキシスなどのオンラインのデータベースを活用して資料収集したり、またオンラインで入手できない文献については現地で資料収集をすることができた。その後、当該資料を整理し、精読し、学説についての理解を進めているところである。 したがって、平成27年度における研究の進捗はおおむね順調であるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、立法資料・政策文書・EU 裁判所の判例等を素材に、EU において国家補助規制の正当化原理がどのように考えられているか検討する。検討の射程は、国家補助に関するルールを定めるEU 機能条約107 条に関するものとして、現在、EU において国家補助規制がEU の法体系においてどのように位置づけられるか、またEU 域内市場においてどのような役割を果たすかという点について、実務においてどのように考えられているかを明らかにする。 平成29年度は、正当化原理の理論研究について以下の2 点を検討する。まず第1 に、研究論文を対象に、これまでEU では国家補助規制の正当化原理がどう捉えられてきたか検討する。第2 に、日本に公的補助規制を導入する際、どのような正当化原理がありうるか、EU の議論を 踏まえながら関連先行研究を検討する。 平成30年度は、前年度までに得られた各論を総括することにより、公的補助規制にかかる正当化原理という規範的課題を立体的に描きだすことを目的に、分析と論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた洋書が発行されなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に購入する。
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